イラン国会議長、IAEA査察協力「延長せず」 検証困難に
【ドバイ=岐部秀光】イランのガリバフ国会議長は27日、24日に期限が切れた国際原子力機関(IAEA)との基本的な査察受け入れの合意について「失効した」と発言、原子力施設に設置している監視カメラのデータや画像をIAEAにわたさないと述べた。同国のタスニム通信が伝えた。
査察協力の継続を求めるIAEAに対し、イランは正式に返答をしていない。IAEAが査察を実施できなければ、核兵器開発の意図をうたがわれるイランの原子力活動の検証が一段と困難になる。ウィーンで進むイラン核合意の再建交渉も前進が難しくなりそうだ。
ガリバフ氏は記録を当局が保管していると指摘し、事前に警告していたデータの削除には踏み切っていないことを示唆した。
IAEAとイランは2月に3カ月間の暫定措置として最低限の検証や監視を続けることで合意、5月にこれを1カ月延長したが、期限切れとなった。イランは米制裁解除が実現すれば、保管しているデータをIAEAにわたす手はずだった。
イランでは今月、穏健派ロウハニ大統領の任期満了にともなう選挙で保守強硬派のライシ司法府代表が当選し、従来の国際協調路線を修正すると予想されている。
強硬派が多数を占めるイラン国会は2020年末、米制裁の早期解除をうながすため、ロウハニ師が率いる政府にIAEAとの協力を制限することを義務付ける法を成立させた。交渉に時間的な猶予をあたえるためIAEAとの協力を延長したロウハニ師の対応に、国会内で不満がくすぶっている。
米国のトランプ前政権がイラン核合意から一方的に離脱し制裁を復活させたのに対し、イランはウラン濃縮レベルの引き上げなど合意違反を重ねた。ウィーン会合では、米制裁の解除の範囲や手続きをめぐり米国とイランの溝が埋まっていない。