暗号資産「責任持って」 スペイン、イニエスタ選手に注意

サッカーのJ1神戸に所属するアンドレス・イニエスタ選手がSNS(交流サイト)で暗号資産(仮想通貨)の取引会社を宣伝するような投稿をしたことについて、スペイン当局が注意を促したことが27日までにわかった。著名人が大きなリスクを伴う投資を一気に広めることで市場が混乱する恐れがあるためで、ファンに正しい認識を伝える必要性を訴えた。
イニエスタ選手は24日、自身のツイッターやインスタグラムに「私はバイナンスで仮想通貨を始める方法を学んでいる」と投稿。ノートパソコンの前で仮想通貨の交換業世界大手バイナンスで取引をしているかのような写真を載せている。
スペイン証券取引委員会はこの投稿について、「仮想通貨には規制がなく、危険を伴う」とイニエスタ選手のアカウントに返信。その上で「投資したり、他人に勧めたりする前に自分自身が知る必要がある」と指摘した。
イニエスタ選手はスペイン代表として2010年ワールドカップ南アフリカ大会で優勝を経験。FCバルセロナでも長く活躍し、18年に神戸に加入した。ツイッターのフォロワー数は約2500万、インスタグラムは約3800万と強い影響力がある。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)はNPO(非営利組織)の報告書を基に440万人以上のスペイン人が仮想通貨に投資し、約4割がこの資産を安全だと考えていると伝えた。イニエスタ選手の投稿は十分な知識がないファンに投資を促すことにつながりかねず、スペイン証券取引委員会は「リスクを伝えることも選手の責任だ」と訴えた。
FTによると、イニエスタ選手のほかにコロンビア代表のハメス・ロドリゲス選手、ウルグアイ代表のルイス・スアレス選手なども11月にバイナンスに関する画像を相次ぎ投稿した。同社が選手らに報酬を支払っているかは不明だが、世界有数のスター選手が言及することで高い宣伝効果が予想される。
仮想通貨を扱う関連企業は近年、プロスポーツに積極的に関与している。サッカーのイタリア1部リーグ(セリエA)のインテル・ミラノのユニホームには今シーズンから仮想通貨アプリ「Socios.com」のロゴが入った。ファンへの露出を増やし、仮想通貨取引の裾野を広げる狙いがあるとみられる。
ただ、仮想通貨は新たな投資対象として人気の高まりとともに価格変動リスクや詐欺などの犯罪行為から個人投資家を守る必要性が増している。欧州では金融商品としての規制や監督体制が追いついていないのが実情で、スペインだけでなく英国も五輪出場経験者と組んで若い投資家に注意を呼びかけるなど、著名人の発信に神経をとがらせている。(井上航介)