/

ロシア、セベロドネツク制圧 消耗戦の様相強まる

ウクライナ東部ルガンスク州の要衝セベロドネツクを掌握したロシア軍は同州に残るリシチャンスクと、隣接するドネツク州の攻略を急ぐ。セベロドネツク陥落は1カ月以上かけたにもかかわらず戦局の転換点にならないとの見方が多い。兵士の士気が低下するなか、米欧の対ウクライナ軍事支援で装備面の差も縮まる。侵攻は出口の見えない消耗戦の様相を深めている。

ロシア国防省は25日にセベロドネツクを「解放した」と発表した。攻防が続いた化学工場についても「抵抗拠点とする試みを阻止した」とし、ロシア側の管理下に入ったと主張した。ロシアは隣のリシチャンスクも落とした上で、ルガンスク州の完全制圧を宣言する考えだが、セベロドネツク陥落だけで1カ月以上かかり苦戦は隠せない。

首都キーウ(キエフ)攻略に失敗したロシア軍は兵力を東部に振り向け、ドンバス地方(ルガンスク州とドネツク州)全域の制圧を目指してきた。だがドネツク州ではロシア軍の占領地域は約6割にとどまり、4月半ば以降の拡大は乏しい。

英国防省は26日、セベロドネツク陥落はロシアがドンバス全域占領へ克服すべき「課題のひとつにすぎない」と指摘した。ドネツク州での補給ルートの確保や要衝クラマトルスクへの進軍をロシアが直面する問題として例示し、セベロドネツクは東部の戦況において決定的な転換点にならないとの見方を示唆した。

ロシアは26日朝にかけて、東部2州以外にも激しいミサイル攻撃を再開した。主要7カ国首脳会議(G7サミット)の開幕を前に、米欧を威嚇したとみられる。東部で支配地域を思うように拡大できない焦りも透ける。

プーチン大統領は25日、ベラルーシのルカシェンコ大統領と会談し、同国に核弾頭を搭載できる短距離弾道ミサイル「イスカンデルM」を数カ月以内に供与する方針を表明した。ベラルーシでは侵攻開始後の憲法改正で、ロシアの核兵器の配備が可能になっていた。

戦況の推移は米欧によるウクライナへの軍事支援が左右する。ウクライナ軍の総司令官は25日、米国が供与した高機動ロケット砲システム「ハイマース」を実戦投入したと明かした。ゼレンスキー大統領は同日「セベロドネツクを含め、ロシアに奪われたすべての都市を取り戻す」と強調した。だが米欧の兵器供与でも圧倒的な火力の差を埋めるハードルは高い。

両国ともに兵力が消耗し、米欧の「支援疲れ」も指摘されるなか、侵攻は泥沼に入っている。

(小川知世)

東部2州の短期制圧難しく、外交で米欧分断も

防衛省防衛研究所の兵頭慎治政策研究部長

ロシア軍は小規模包囲作戦に戦術を切り替えた後もセベロドネツク陥落に時間を要した。隣のドネツク州でも直近は占領地域を大幅に広げられていない。ルガンスク州全域の掌握後にドネツク州に戦力を集中させても、ロシア軍が短期で東部2州を完全制圧するのは簡単ではない。

侵攻ではロシア軍の兵士の士気低下、指揮命令系統や補給の混乱といった構造的な問題が浮き彫りになった。大規模な動員による兵力不足の解消など根本的な策を講じなければ、ロシア軍が劇的な進展を示すことは困難だろう。

ロシアはこれまで目ぼしい戦果を示しきれておらず、東部2州の完全制圧を断念するとは考えにくい。同時に、侵攻が長引くほどに膨らむロシア国内の不満との兼ね合いもプーチン政権は考慮する必要がある。2024年に控える次期大統領選まで、プーチン政権が現在の水準での激しい戦闘を続ける可能性は低いのではないか。

米欧が結束を維持できるかも焦点となる。プーチン大統領はトルコや中国、アフリカ諸国などとの関係をテコにした外交に動いている。食料不足などへの危機感をあおり、国際社会がウクライナに対して譲歩を迫るように仕向けようとしている。ウクライナへの軍事支援や対ロシア制裁強化、戦争の出口をめぐって米欧で生じ始めた温度差を見極め、分断や切り崩しを図ることも予想される。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

ウクライナ侵攻

ロシア軍がウクライナに侵攻しました。戦況や世界各国の動き、マーケット・ビジネスへの影響など、関連する最新ニュースと解説をまとめました。

■動く戦況地図  ■戦況  ■マーケット・金融への影響  ■ビジネスへの影響 

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン