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トランプ路線180度転換、数字でみるバイデン政権100日

(更新)
宣誓式に臨むバイデン米大統領(1月20日、ワシントン)=ロイター

「無駄にする時間はない」――。1月20日、バイデン米大統領が公式ツイッターに就任後初めて投稿した言葉には、猛威を振るっていた新型コロナウイルスへの対応やトランプ前政権時代に深まった国内の分断の修復を急ごうという決意がにじんだ。それから100日。バイデン政権の歩みを数字から読み解く。

過去3人の大統領に比べ突出

バイデン氏は就任から4月16日までに、19の大統領令でトランプ前大統領が出した大統領令62件を覆した。過去3人の大統領に比べ突出して多く、前政権の政策から180度の転換を図る政権の姿勢が鮮明だ。同日までに出した大統領令の総数も40と過去3人の大統領を上回る。

就任初日に「国境の壁」建設やイスラム圏からの入国制限といったトランプ氏の大統領令を撤廃するなど、覆したのは移民政策関連が多い。

ただ、16日の大統領令では21会計年度(20年10月~21年9月)の難民受け入れ数上限を、トランプ前政権と同じ1万5千人に据え置いた。議会には6万2500人に引き上げる意向を伝えていたため民主党は反発。バイデン氏は5月15日までに改めて「最終的な上限」を発表する予定だ。

党派で大差、米国の分断鮮明

米世論調査会社ギャラップによると、バイデン氏の支持率は就任以降、55%前後で推移している。歴代大統領の就任後3カ月の平均(61%)をやや下回るが、3月時点の支持率は54%と同時期のトランプ氏(40%)を上回っている。各種世論調査では新型コロナ対策への評価が高い。

ただ、支持率を民主党支持者と共和党支持者に分けてみると、分断された米国の姿が鮮明だ。就任直後(1月21日~2月2日)の民主党支持者による支持率は98%に達したが、共和党支持者の支持率は11%にとどまる。その差は87ポイントと、トランプ氏の党派別支持率の差(76ポイント)を上回り戦後の歴代大統領で最大だ。

ギャラップ社は「大統領に対する初期の評価が、以前よりも党派に影響されやすくなっている」と分析している。

バイデン氏の当確報道を喜ぶ支持者(20年11月、ワシントン)=ロイター

過去15年で最高、左右両派から批判

バイデン政権の発足後、米南西部のメキシコとの国境には主に中米からの移民希望者が押し寄せている。米税関・国境取締局(CBP)が拘束した3月の不法越境者数は前月比71%増の約17万2千人にのぼった。米メディアによると不法越境者数は少なくとも過去15年間で最高水準にある。増加率も大きく、今後さらに増えることが予想されている。

バイデン氏は3月末の記者会見で「国境にやってくる人の数は毎年、1~3月に大幅に増加する」として政権の寛容姿勢のせいではないとの認識を強調したが、共和党は「国境の危機」と政権の責任を追及する。一方で左派や人権団体も、特に未成年者の保護施設での収容状況が劣悪だと批判しており、左右から政権への風当たりが強まっている。

財政悪化、議会調整難航も

3月に成立した1.9兆ドル(約200兆円)の経済対策は失業保険給付金の積み増し、個人への現金給付などに振り向けた。新型コロナ禍の打撃を緩和し、景気を回復軌道に乗せる狙いだ。

これだけでもリーマン・ショック後にオバマ政権が実施した景気刺激策(8千億ドル)の倍の規模だが、バイデン政権はさらに2.3兆ドルのインフラ投資計画と、減税含め1.8兆ドルを育児・教育支援に充て格差是正をめざす計画も打ち出した。

経済対策の合計は6兆ドル。イエレン財務長官は「ゴー・ビッグ」と主張したが、トランプ政権の20年3月にも2兆ドル超の緊急対策を実施しており、財政は悪化している。バイデン政権は法人増税やキャピタルゲイン課税強化で財源を確保する考えだが、議会との調整は難航が予想される。

コロナ対策で米財務省が発行した給付金小切手(3月)=ロイター

人口の4割到達、拒否層も多く

バイデン大統領は21日、政権が発足した21年1月20日以降の新型コロナワクチンの総接種回数が、就任100日の目標としていた2億回を達成したと発表した。米疾病対策センター(CDC)によると、すでに米人口の4割超、18歳以上では半数以上が少なくとも1回接種した。ただ、接種を拒否する層も根強い。今後接種のペースが鈍り、「集団免疫」の獲得が遅れる懸念もある。

バイデン氏は就任前の公約だった1億回の接種を3月中旬に達成、目標を2倍に引き上げていた。米政治サイトのリアル・クリア・ポリティクスがまとめた4月8~20日の各種世論調査の平均によると、政権のコロナ対策への支持率は61.9%と高い。22年の中間選挙に向け、政権はコロナ対策の成果を積極的にアピールする戦略だ。

すでに米人口の4割超が新型コロナワクチンを少なくとも1回接種した(21日、ニューメキシコ州)=ロイター

消費関連、客足戻る 先行きには不透明感

1~3月の非農業部門の就業者数は累計162万人増加し、特に3月は91万6000人増と力強く伸びた。客足が戻ってきた飲食店、芸術・娯楽サービス、宿泊サービス分野の雇用増に勢いがあるほか、住宅市場が好調なため建設業が労働力を増やしている。失業率も緩やかに下がってきており、3月は6.0%だった。

ただし、2020年3~4月に新型コロナの拡大によるロックダウン(都市封鎖)や経済の停滞で2200万人以上の雇用が失われており、いまだに800万人以上が復職できていない。

新型コロナの動向次第で先行きにも不透明感が残っており、大規模な雇用拡大には様子見の企業も多い。長期失業者や、技能のミスマッチなど解決に時間がかかる課題も多い。

需要急増で劇的改善、インフレ懸念も

3月の米サプライマネジメント協会(ISM)の米製造業景況感指数は、約37年ぶりの高さとなる64.7まで上昇した。ワクチンの普及やそれに伴う経済再開の進捗に加え、政府の経済対策の効果で消費が急増し、企業の景況感も劇的に上向いている。

コロナ危機の打撃が大きかったサービス業の景況感も回復が著しい。3月の非製造業(サービス業)の景況感指数は、前月から8.4ポイント上昇の63.7となり、過去最高を記録した。米ミシガン大学がまとめた4月の消費者態度指数は前月比1.6ポイント上昇の86.5と1年1カ月ぶりの高水準で、消費の回復が続く。

ただ、材料不足や労働力不足、輸送障害など供給面の問題を指摘する企業が増えており、物価上昇への懸念が強まっている。

総額横ばい、対中国に重点

バイデン政権は9日、22会計年度(21年10月~22年9月)の国防予算について総額7530億ドル(約81兆円)とする案を議会に示した。インフレを加味すると前年度比ほぼ横ばいで、代わりに気候変動への対応や医療などに費やす「非国防費」を前年度比16%増やすよう求めた。非国防費を削り、国防費の拡大を目指してきたトランプ前政権からの方針転換となる。

中国は21年の国防費を前年比6.8%増の1兆3553億元(約22兆円)に積み増すなど海軍力の増強を図っている。バイデン政権はこれに対抗するため、国防予算の95%を占める国防総省予算について「中国の抑止」や新技術の研究開発、対中国やインド太平洋戦略をにらんだ海軍力の強化などに重点を置く方針。詳細は5月以降に発表される見通しだ。

マイノリティーを積極登用

新政権のスタートに欠かせないのが迅速な人事だ。米ブルッキングス研究所の統計によると、4月23日までに承認された15政府機関の閣僚と高官は26人。オバマ、ブッシュ(43代)両元大統領の就任100日時点は下回るが、民主党の強い抵抗を受けたトランプ前大統領よりは順調といえる。

特に閣僚級ポストは、行政管理予算局(OMB)局長と科学技術政策局(OSTP)局長を除き全て埋まった。民主党が上院議席の過半数を有することや、比較的共和党の支持を受けやすい人選が多いことが功を奏したとみられる。

バイデン氏は女性やマイノリティー(少数派)を積極的に登用。多くの「女性初」に加え、初のトランスジェンダー(出生時の性と自認する性が一致しない人)の高官も誕生している。

相場過熱に警戒感、譲渡益課税に懸念も

ダウ工業株30種平均は4月16日、史上最高値となる3万4200ドルをつけた。ワクチン普及への期待から経済再開の恩恵を受けやすい銘柄や、成長期待の高いハイテク株が人気だ。米国内の消費活動が活発になっていることを受けて企業業績は改善しており、株価は上昇基調が続いている。

株高の背景には歴史的な低金利によるカネ余りがある。市場では相場過熱への警戒感も強まっているが、今のところ米連邦準備理事会(FRB)は金融緩和を維持する方針を変えていない。

ただ、バイデン政権は富の再配分による格差縮小をめざし、近く株式などの譲渡益(キャピタルゲイン)課税の強化を打ち出す見通し。株式投資の魅力が薄れるほか、含み益のある保有株を増税前に売る動きにつながる可能性もある。

(ワシントン=芦塚智子、長沼亜紀)

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