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欧米、ベラルーシ強制着陸非難「国家主導ハイジャック」

(更新)

【ブリュッセル=竹内康雄、モスクワ=石川陽平】欧州を拠点とするライアンエアーの旅客機が23日、ベラルーシの航空管制当局の指示で強制着陸させられた。着陸後、反体制派メディアの創設者が身柄を拘束され、欧米各国はベラルーシを一斉に非難。ライアンエアーも「国家主導のハイジャックだ」と批判した。欧州連合(EU)は24日からの首脳会議で、ベラルーシ空域の飛行禁止などの制裁を検討している。

強制着陸させられたのは、欧州格安航空会社(LCC)のライアンエアーの旅客機で、ギリシャのアテネからリトアニアのビリニュスに向かっていた。ベラルーシ当局は機内に爆発物が仕掛けられた可能性を理由としたが、国営通信のベルタによると、ルカシェンコ大統領の命令でミグ29戦闘機が緊急発進し、ライアンエアー機を首都ミンスクの空港に誘導した。

到着後には治安部隊が同機に乗り込み、インターネットメディア共同創設者のロマン・プロタセビッチ氏を拘束した。

米欧諸国は、反体制派を厳しく取り締まるルカシェンコ氏がこの強制着陸を仕組んだとして厳しく批判した。プロタセビッチ氏はテロに関与したとして、最長で禁錮15年の実刑を受ける可能性があるという。米欧は同氏が拷問を受けるおそれがあるとみる。ライアンエアーのオライリー最高経営責任者(CEO)はアイルランドメディアにベラルーシ当局がプロタセビッチ氏を連れ去る目的があったとして「国家主導のハイジャックだ」と指摘した。

欧州連合(EU)のミシェル大統領は23日の声明でベラルーシ当局に「拘束された乗客を直ちに解放し、乗客の権利を保障するよう要求する」と主張。ポーランドのモラウィエツキ首相はツイッターに「前例のない国家のテロ行為だ」と書き込んだ。ブリンケン米国務長官も声明で「深く懸念しており、完全な調査が必要だ」と表明した。

EUは24~25日の首脳会議でこの問題を討議する。フォンデアライエン欧州委員長は「ハイジャックに関与した責任者は制裁を受ける必要がある」と話しており、加盟27カ国として制裁を発動するか決める。

EUは2020年にもベラルーシ大統領選で不正があったなどとして、ルカシェンコ氏らのEU域内の資産凍結や渡航禁止の制裁を科している。フランスのボーヌ欧州問題担当相は24日、追加制裁としてEU各国の航空機によるベラルーシの空域飛行禁止を検討すべきだと指摘した。真相解明に向けて、国際的な調査を求める可能性もある。

ベラルーシが異例の行動に出たのは、反体制派の存在を許さないとの強硬な姿勢を国内外に示すためだ。独裁的な権力を維持するため、国外に脱出した反体制派も弾圧し、反体制派を保護している欧米諸国を強くけん制した格好だ。

ベラルーシでは20年の大統領選後、政権への大規模な抗議集会が起きたが、ルカシェンコ氏は国内の抗議運動を力で抑え込むことに成功し、強権的な体制を堅持しようとしている。ルカシェンコ氏は24日、無許可の大規模集会を生中継で報道することを禁じる法律に署名した。

ポーランドやリトアニアにはベラルーシやロシアの反体制派の多くが脱出し、活動の拠点を置く。プロタセビッチ氏が運営し、抗議運動で大きな役割を果たしたインターネットメディア、テレグラムチャンネル・NEXTAもポーランドを本拠地としていた。

1994年から大統領の座にあり、権力を自らに集中してきたルカシェンコ氏が冷静な判断力を失っているとの批判も少なくない。昨年8月の抗議集会をヘリコプターで上空から視察した際には集会参加者を「クマネズミ」と呼び、自動小銃を持つ自身の姿を誇示した。

ロシアにとって兄弟国家ベラルーシの今回の暴挙は外交的にマイナスだ。6月の米ロ首脳会談開催を検討し、米欧との関係悪化に歯止めをかける転機とする考えだった。だがベラルーシを支え、同国に近い強権的な政治体制を持つプーチン政権に対しても欧米の批判が高まる可能性がある。

民間航空機の運航に関する国際ルールは1944年の「国際民間航空条約(シカゴ条約)」から始まり、経済のグローバル化の進展とともに整備が進んだ。各国は領空に対して主権を持つが、シカゴ条約を基本的な枠組みとして、多国間や2国間協定で領空通過の権利を認め、人とモノの往来を活発にしてきた。同条約は現在、ベラルーシを含む、世界のほぼすべての国が締結する。

民間機が他国の領空を通過する際には、あらかじめ飛行計画を提出し、その国の管制官の指示に従って指定された航路を飛ぶ。管制官は安全上の理由で指定した空港に着陸させる権限もある。ただ、不明機でもない民間機を強制的に着陸させたベラルーシ当局の対応は異例といえる。ライアンエアーは「不法行為を非難する」との声明を出した。ラトビア国営航空会社のエア・バルティックは状況が明確になるまでベラルーシ空域の飛行を回避すると発表した。

国際民間航空機関(ICAO)はツイッターで「シカゴ条約に違反する可能性がある強制的な着陸に強い懸念を表明する」と発表した。国際航空運送協会(IATA)も「国際法に反する民間航空の運航へのいかなる干渉も強く非難する」とした。

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