欧州議会、「GAFA規制案」を承認 違反なら巨額罰金も

欧州連合(EU)が大手IT(情報技術)企業への規制を本格化させる。欧州議会はグーグルやメタ(旧フェイスブック)といったネット事業者らに違法コンテンツの削除や広告の適正な表示を義務付ける法案を可決した。プラットフォーマーと呼ばれるこうした米巨大IT企業のサービスは市場や世論への影響が大きい。法律で責任を明確化させ、利用者保護につなげる。
欧州議会が20日に「デジタルサービス法案」を可決した。EU人口の10%に相当する4500万人以上の利用者を抱えるなどの条件を満たす企業を「大手」と定義し、厳しい規制の対象とする。事実上、GAFAなど米IT大手に対象を絞った内容だ。
具体的には児童ポルノやヘイトスピーチ、テロを誘発する動画など違法コンテンツの排除や差し止めを義務付ける。広告表示のルールも厳格化する。利用者のネット上の行動を追跡・分析して配信するターゲット広告に活用するための個人情報の利用を規制するほか、未成年者をこうした広告の対象としないことなどを盛り込んだ。
法案によるとこれらに違反した場合、最大で世界売上高の6%の罰金が科される。他国に先駆けて厳しいルールを導入することで、グローバルなモデルとする狙いもある。
EUの欧州委員会が2020年12月に包括的な規制案を公表していた。包括規制案は今回承認されたデジタルサービス法と「デジタル市場法」の2つの法案からなり、00年制定の現行法を抜本的に見直す内容だ。20年前と比べIT産業は巨大化しており、時代に合わせた制度を整える。
デジタル市場法案は、巨大IT企業を念頭にネット通販など自社サービスの優遇を禁じているほか、ライバル企業にプラットフォーマーとして持つ情報を開放することなどを盛り込んだ内容だ。

サービス法、市場法ともに、欧州議会での承認ののち、EU加盟国でつくる理事会などの協議を経て成立する。22年1月にEU議長国に就いたフランスは、6月までの議長国任期中に成立のめどをつけたいとの考えを示している。
背景には、従来の規制が時代に合わなくなったことに加え、EUが巨大IT企業への影響力を維持したいとの狙いがある。
EUは約4億5千万人を抱える大市場。消費だけでなく、データまでもが米巨大IT企業に席巻されている状況を打開したいとの思いは強い。これまでもアマゾン・ドット・コムやアルファベット傘下のグーグルに巨額の制裁金を科すなど厳しい姿勢をとってきた。
欧州委は21年には人工知能(AI)に関する包括規制案も公表。米中の技術覇権争いが激しくなる中、ビジネスや安全保障でのデータの重要性は増している。EU市民のデータを域内で管理する「データ主権」を取り戻すことをめざす。
新しいルールを導入することでEU発の新興企業の成長を支援する狙いもある。(井上航介)