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ウガンダ女性の自立を支援、社会起業家の仲本千津さん

フォーカス

東アフリカ・ウガンダのシングルマザーを雇用し、経済的な自立を支援する。色鮮やかなアフリカの布を使ったアパレルブランド「RICCI EVERYDAY」(リッチーエブリデイ)の現地社員は、創業時の3人から7年で17人に増えた。

アフリカ支援は高校時代からの夢だった。起業のきっかけは、非政府組織(NGO)職員として駐在したウガンダで出会ったシングルマザーのグレイスさんだった。月収わずか10ドル(約1400円)で4児を育てる力強さに圧倒された。「教育を受けられず、安定した職に就けなかった」と悔やむ姿に「女性が自信を持てるように」と奮い立った。

製造・販売するのは、2000円台の小物から3万円台のバッグなど。裁縫が得意な現地社員は、同国の平均月収(約60ドル)の2倍以上の給与を手にする。医療費の補助や無利子ローンなどの福利厚生も得られる。

大学への進学や起業を果たした社員もいる。「生活の安定が、人生の次の段階に進む力になっている」と手応えを感じる。

一方で新型コロナウイルス禍でアフリカから撤退する日本企業も目立つ。8月下旬に開かれた第8回アフリカ開発会議(TICAD8)でも経済復興が議論された。仲本さんも会議前の国内での関連イベントで講演し、現地の実情を訴えた。

事業の持続性も考慮して、製品の素材はアフリカ産にこだわる。自身も定期的にウガンダを訪れ、素材探しや商品開発に奔走する。市場で手にした布の工場を探し出し、西アフリカ・ガーナに足を運んだこともあった。ウガンダでは綿よりも古くから使われていた樹皮布からつくる、本革のような風合いの「ビーガンレザー」も研究中だ。

赤や緑といった原色を使ったアフリカンプリントに「心が沸き立つ」と魅力を語る。印象に残るのは、顧客から届いた「落ち込んだ時に元気が出た」という言葉だ。スーツの下に明るい色の服を着て、息苦しさをはね飛ばそうとしていた銀行勤務時代の自分と重なった。

6月に都内の直営店を移転・拡張した。2023年の米国での展示会に出展を予定し、シンガポールやインドでの販売も計画中だ。目指すのは「せわしない日々の中で、自分を取り戻すきっかけ」を提供すること。ウガンダ発のファッションアイテムで、現地女性の自立支援だけでなく、世界中の女性を応援できればと願う。

(武藤珠代)

なかもと・ちづ 1984年静岡県生まれ。一橋大院修了後、邦銀で法人営業を経験。国際農業非政府組織(NGO)の職員としてウガンダ駐在を経たのち、2015年に「RICCI EVERYDAY」の日本法人、16年にウガンダ法人を設立。

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