多国間連携「日米を中核に」 富士山会合パネル討論 - 日本経済新聞
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多国間連携「日米を中核に」 富士山会合パネル討論

日米の政府関係者や有識者らが国際問題を話し合う第8回「富士山会合」(日本経済研究センター、日本国際問題研究所共催)が23日、都内で開催された。日米豪印の枠組み「Quad(クアッド)」などの日米連携をテーマにしたパネル討論で、ジョセフ・ナイ米ハーバード大学特別功労名誉教授は「世界は多極化している。日米欧が結束を弱めれば、中国によって分断が深まりかねない」と述べ、多国間で包括的な連携を深める重要性を訴えた。

ナイ氏は気候変動や世界的な感染症の流行などは「中国との協力なしに解決しない」と述べた。経済分野を含む複数の側面を踏まえて、対中戦略を講じる必要性を強調した。クアッドについては「日米が軍事的、経済的に中核にいる。インドが時に慎重な姿勢を見せるなど課題はあるが、中国に支配されることを恐れ、米国のプレゼンスを歓迎する点はアジア諸国に共通する。日米が中心であるべきだ」と主張した。

ランドール・シュライバー元米国防次官補は日米同盟の重要性を強調した。「日米同盟を通じて自由で開かれたインド太平洋を維持できる」と述べた。クアッドや米英とオーストラリアによる安全保障協力の新たな枠組み「AUKUS(オーカス)」の創設によって、日米同盟の役割や意義は損なわれないとの見方を示した。台湾情勢などを念頭に「最も重要な柱は日米同盟で、さらに重要性を増していく。同盟の近代化も必要だ」と指摘した。

元官房副長官補の兼原信克・同志社大学特別客員教授は「(米欧などの)西側諸国が団結し、しっかり中国をコントロールしていかなければならない」と訴えた。「アジア、特に中国を自由主義的な国際秩序に組み込むことが日本の責務だ。インドも巻き込む必要がある」と語った。

西正典・元防衛次官は経済の観点から日本の役割を説いた。新型コロナウイルス危機に伴う財政出動の拡大などを受け、世界経済はこれから混乱に向かうと警鐘を鳴らした。混乱を早期に解消するには中国の協力が不可欠だとして、「日本が東南アジア諸国連合(ASEAN)などを率いて、世界経済の立て直しを主導すべきだ」と訴えた。

佐々江賢一郎・日本国際問題研究所理事長はクアッドについて「首脳レベルでの率直な意見交換を通じて信頼関係を築く場にすべきだ」と述べた。枠組みの拡大よりも、結束の深化を優先させるように提言した。米国はASEAN地域への関与を高めるべきだとの考え方も示した。

パネル討論の司会は市原麻衣子・一橋大学准教授が務めた。

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