ロシア原発占拠「前例ない事態」 IAEA事務局長会見

来日中のグロッシ国際原子力機関(IAEA)事務局長は20日、日本記者クラブで記者会見し、ロシアがウクライナに侵攻し原子力発電所を占拠したことについて「前例のない事態だ」と述べた。ロシア側の支配下にあるザポロジエ原発の査察に向け「両国と協議をしている」とも説明した。北朝鮮の核開発問題については「重大な懸念を持っている」と話した。
グロッシ氏は原子力施設の防護が、安全な原子力利用の「柱の一つ」と述べ「あらゆる状況下で尊重されるべきだ」と強調した。ロシアは旧ソ連時代に事故を起こしたウクライナ北部のチェルノブイリ原発を一時制圧したほか、北東部ハリコフにある核物質を扱う研究所も複数回攻撃した。
欧州最大級の発電能力を持つザポロジエ原発は3月上旬にロシア側の攻撃を受け、その後、ロシア軍が制圧した。グロッシ氏は専門家チームとともに、侵攻後ウクライナを2度訪れているがザポロジエ原発は訪問できていない。「近いうちに3度目の訪問を果たしたい」と語った。
北朝鮮をめぐっては、ウラン濃縮施設など核開発関連施設が増えていることを把握していると明かした。米専門家らの衛星画像分析でも北西部の寧辺(ニョンビョン)にある核施設で、原子炉を再稼働した兆候が確認されている。米国や韓国は北朝鮮が近く核実験に踏み切る可能性があるとみている。
北朝鮮は2009年にIAEA査察官を追放したが「政治的合意が得られればいつでも(査察官が)戻る用意はある」とグロッシ氏は述べた。
東京電力福島第1原発の処理水を海洋放出する日本政府の方針については「全体で数十年かかるプロセスになるだろう」とコメントし、IAEAとして長期にわたり関与していく考えを示した。グロッシ氏は19日に同原発を視察のため訪れていた。
イランの核合意再建に向けた協議はウクライナ侵攻で中断している。グロッシ氏は「交渉が1年以上続き、各当事国は『機会の窓』が閉じつつあると認識している」と述べ、交渉の先行きが見通せないことを示唆した。

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