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ロシア、首都キエフも標的か 米「5割が臨戦態勢」

(更新)

【ワシントン=中村亮】米欧各国はロシアがウクライナに対して3方向から攻撃を仕掛ける態勢を強めているとして警戒レベルを引き上げた。首都キエフも標的とみられ、サイバー攻撃をからめて同国を揺さぶる公算が大きい。バイデン米大統領は「ロシアはまだ外交を選択できる」と戦争回避を訴えるが、状況は深刻さを増している。

バイデン氏がロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻を決断したと確信した裏には、米情報機関などが集めた複数の傍証があるとみられる。

ロイター通信によると、米国防総省高官はウクライナ国境近くのロシア軍部隊の40~50%が攻撃態勢にあると明らかにした。集結した大隊戦術グループの数は125にのぼり、2月初めの80からさらに増えた。ロシアが侵攻の準備を着々と整えている可能性が高い。

侵攻に必要な物資も到着している。オースティン米国防長官は19日、ロシア軍が後方支援を強化していると指摘した。ウクライナ周辺で燃料の備蓄を増やし、野戦病院の設備も運び込んだと説明した。同氏は17日、ロシア軍が軍事演習では不要な輸血用の血液を持ち込み、在庫を積み増していると明らかにしていた。

米CNNは米政府高官の話として、ロシアがウクライナ侵攻後に排除すべきウクライナ政府高官のリストを作成していると伝えた。ロシアが侵攻後の政治体制まで画策しているとみているもようだ。

バイデン政権はロシアの侵攻がミサイル攻撃や空爆で始まるとみる。まずウクライナ軍が敵の位置を把握するために使うセンサーや防空システムを破壊し、地上侵攻に移るとの見方が多い。米政権はロシアが侵攻と並行してウクライナ軍や基幹インフラにサイバー攻撃を実施すると警戒する。

地上侵攻は3つのパターンが考えられる。米戦略国際問題研究所(CSIS)はウクライナ北方のベラルーシからキエフへ進軍するシナリオを挙げる。ベラルーシ国境からキエフの距離はわずか100キロメートルほど。進軍の最短ルートと位置づけられる。米政権はロシア軍が演習を理由に3万人規模の兵士をベラルーシに配置したと推計し、キエフが標的になると公言している。

ロシア軍がキエフへ進軍する場合、一般市民に大量の死傷者が出る可能性があるためウクライナ政府は戦闘をいつまで続けるかの判断を迫られる。ロシア軍がキエフに到達する前にウクライナ政府がロシアの要求をのむ可能性も排除できない。

2つ目は南部から攻め込むパターンだ。米国の駐欧州陸軍元司令官ベン・ホッジス氏はロシア軍が黒海やアゾフ海から上陸作戦を実施し、港湾都市を制圧する可能性を指摘する。ウクライナ領クリミア半島に配置した部隊も動員し、ウクライナの海上物流を遮断して経済に打撃を与え、同国や米欧に対してロシアの要求を受け入れるよう迫るシナリオだ。

3つ目はウクライナ東部から侵攻し、ロシアが支援する親ロ派武装勢力が占領する地域を拡大。さらに西へ進んでキエフに向けて進軍していくことが考えられる。

欧州も同じようなルートでのロシア軍の動きを警戒する。英国防省は17日、考えられる地上侵攻の動きを示した地図を公開した。ウクライナの北、南、東の3方向から計7ルートでの侵攻を想定。キエフや東部の工業都市が目標となり、その後に南部オデッサなどドニエプル川以西の都市に向かうと分析した。

米欧はロシア軍が短期決戦で主要都市を押さえる事態を危惧する。国防総省で北大西洋条約機構(NATO)を担当したイアン・ブルゼズィンスキー氏は、ロシアによる侵攻の兆候を米政権が相次いで公開しているのは奇襲を防ぐ狙いだとみる。戦力で上回るロシア軍がサプライズ攻撃を仕掛ければウクライナ軍は一段と厳しい戦いを強いられる。

戦闘が長引くとロシアの地上侵攻の勢いが弱まるとの見方が目立つ。ウクライナでは例年、2月に地面が凍結して戦車などが進みやすくなるが、3月中には気温の上昇で地面がぬかるみ進軍の速度が大幅に下がるからだ。米シンクタンクのアトランティック・カウンシルは1月のリポートで「侵攻に時間がかかるほどロシア軍にとって失敗のリスクが増す」と指摘した。

米欧は引き続きロシアに対話による緊張緩和を促している。フランスも「最悪の事態」(大統領府高官)を避けるため、20日に仏ロ首脳が電話協議すると明かした。米側によると、24日にはブリンケン米国務長官とロシアのラブロフ外相が会談する方向となっており、米国はあくまで対話の道を探り続ける方針だ。

ロシアがぎりぎりまで緊張を高め、米国から譲歩を引き出そうとしているとの見方も残る。ウクライナ国境付近に集結したロシア軍は「最大19万人」と米政府高官は推計しており、ロシア軍の総兵力(約90万人)のうち2割、陸軍(約28万人)に限れば過半数を集めた計算になる。

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