カザフ前大統領が完全引退 暴動後初めて公に姿
(更新)

【モスクワ=共同】中央アジア・カザフスタンのナザルバエフ前大統領(81)は18日、自身のウェブサイトなどで国民向けにビデオ声明を発表し「私は既に年金生活者だ。トカエフ大統領が全ての権力を掌握している」と述べ、政界からの完全引退を宣言した。
燃料価格引き上げに抗議するデモが暴徒化し多数の死傷者が出た後、ナザルバエフ氏の姿が公表されたのは初めて。
暴動の沈静化に成功したトカエフ氏は政治的基盤を強化、ソ連時代末期から30年以上にわたって国を支配したナザルバエフ氏の側近や親族らを要職から次々と解任している。
デモ暴徒化の背景に長期支配を続けたナザルバエフ氏や親族、側近らへの市民の不満があったと指摘されており、完全な引退表明を余儀なくされたとみられる。
声明でナザルバエフ氏は、トカエフ氏が間もなく政権与党党首に就任するとし「政治エリートの間に分裂はない」と強調。トカエフ氏の改革を支持するよう呼び掛けた。
その上で「われわれは(ソ連崩壊後に)改革を成し遂げ、カザフを中央アジアの経済的リーダーに押し上げた」と自賛。「国の安定こそ私の目的だった」と述べ、トカエフ氏との二重権力を望まない意思をにじませた。
ナザルバエフ氏は1989年に旧ソ連カザフ共和国共産党第1書記に就任。90年に大統領になり2019年に退任した。
デモは今月2日に始まり、5日に最大都市アルマトイで市庁舎が一時占拠されるなどした。トカエフ氏は「外部からの侵略」としてロシア主導の集団安全保障条約機構(CSTO)に部隊派遣を要請、治安部隊に発砲を命じて暴動を鎮圧した。一連の暴動で225人が死亡、4500人以上が負傷した。