ポーランド着弾、発射巡り見解割れる ウクライナと米欧

ポーランド領内にミサイルが着弾して2人が死亡した事件をめぐり、ウクライナと同国を支援する米欧各国の見解に相違が生じる異例の事態になっている。米国や北大西洋条約機構(NATO)の高官はウクライナの迎撃ミサイルの可能性が高いと説明するが、ウクライナのゼレンスキー大統領は着弾したのはロシアのミサイルだとの立場を崩していない。
ポーランド政府の発表などによると15日、ミサイルがウクライナとの国境から約6キロメートルの穀物乾燥施設に落ち、爆発で市民2人が死亡した。
ゼレンスキー氏はすぐにNATOへの攻撃だと主張。ロシアの攻撃と断定されればNATOの集団的自衛権が発動される可能性があり、核保有国の米ロが直接戦火を交える事態へのエスカレートが懸念された。
ただ、ポーランドのドゥダ大統領は16日、「我々や同盟国の情報によると、ミサイルは旧ソ連製のS300で、ロシア側から発射された証拠はない。ウクライナの防空システムから発射された可能性が高い」と述べた。NATOのストルテンベルグ事務総長も16日、ウクライナが発射した地対空ミサイルだった可能性を指摘した。

それでもゼレンスキー氏は着弾したのは「我々のミサイルでないことは疑いない」と述べ、自国軍からの報告を尊重する立場を示した。事実確認のため、現地調査への参加も訴えた。一方、バイデン米大統領は17日、ウクライナの主張について「証拠がない」と否定的な認識を示した。
後ろ盾である米欧の見解にゼレンスキー氏が同調していないのは、自国の責任を認めれば偽情報工作を繰り返してきたロシアを利することにつながるとの判断があるようだ。軍の最高司令官でもある大統領にとって、戦時下の軍事的な判断の誤りを容易に認められない事情もある。
ロシアは発生当初から「無関係だ」と主張し、早々にロシアの関与を断定したゼレンスキー氏を非難してきた。ペスコフ大統領報道官は16日「米国側の抑制された、よりプロフェッショナルな対応に注目すべきだ」と述べ、ウクライナ側の対応を批判した。
米欧各国も見解の相違をロシアに付け入られる事態を警戒する。「究極の責任を負うのは違法な戦争を続けるロシアだ」(ストルテンベルグ氏)としてウクライナを擁護する立場で足並みをそろえている。
ロシア軍は17日もウクライナへのミサイル攻撃を続けた。

2022年2月、ロシア軍がウクライナに侵攻しました。戦況や世界各国の動き、マーケット・ビジネスへの影響など、関連する最新ニュースと解説をまとめました。
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