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UAE、F35調達交渉中断を通告 米アラブ同盟関係に溝

【ドバイ=岐部秀光】アラブ首長国連邦(UAE)が米国から最新鋭のステルス戦闘機F35を購入するための交渉中断を通告したことが、明らかになった。UAE経由で軍事技術が中国に流出することを警戒する米国が機密漏洩を防ぐための厳格な措置を求め、UAE側が反発したもようだ。バイデン政権の米国とアラブ同盟国の間の溝が一段と鮮明になっている。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルなどによると、UAEは①技術的な要件②自立運用への制限③費用対効果――の観点から米国に交渉の中断を通告した。230億ドル(約2兆6000億円)規模の大型商談としても注目を集めていた。

UAEは高速通信規格「5G」の通信網整備で、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の技術に依存しようとしている。米国はF35のステルス性能を支える高度な軍事技術がUAEを経由して中国側に漏れることを警戒する。

米国はF35の作戦使用のタイミングや方法についても制限を加えようとしていたもようだ。両国の国防当局は15、16日に高官協議を予定している。今後の防衛協力について話し合う見込みで、F35も議題に上る可能性がある。

高いステルス性能技術は、敵レーダーに察知される前に戦闘機が編隊を組んで相手側の基地を攻撃し、これを無力化する作戦を可能にする。

それだけに、米国は供給相手を欧州や日本、韓国などの同盟国に限ってきた。中東でF35を保有するのはイスラエルのみで、UAE側には2020年のイスラエルとの国交正常化の見返りに米国が売却に応じるとの期待があった。実現すれば、中東地域の軍事バランスが変わる可能性も指摘されていた。

アラブ湾岸諸国と密接な関係を築いたトランプ前政権の中東政策をバイデン政権は大きく転換しようとしている。アラブの人権問題や民主化への取り組みの遅れを巡って各国への圧力を高める一方、トランプ政権が離脱したイラン核合意では復帰の話し合いを進める。

UAEにとっては連邦を構成するアブダビに石油権益をもつ中国との経済関係も重要だ。米中対立から距離を取り、バランス外交を進めようとしている。UAEはイランとの対立棚上げも模索している。

UAEは最近、フランスのマクロン大統領の訪問にあわせ戦闘機「ラファール」の調達など170億ユーロ(約2兆2000億円)を超える兵器購入契約を交わしていた。

伝統的な米国とアラブ諸国の同盟関係は、米国のシェール革命や世界の脱炭素の流れによって変質を迫られている。米軍は8月にはアフガニスタンから撤収し、今月にはイラクでの戦闘任務を終えた。

中東の安全保障で大きな役割を果たしてきた米国の関与縮小により、不安定な中東政治の構図は一段と複雑化する可能性がある。

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