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タリバン首都制圧1カ月、経済まひ 10万人超が国外脱出

デモ参加者に銃を向けるタリバンの戦闘員(7日、カブール)=ロイター

【ニューデリー=馬場燃】イスラム主義組織タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧してから15日で1カ月になる。タリバンは暫定政権の主要閣僚を発表したものの、具体的な政策づくりが遅れており、経済はまひ状態に陥っている。市民の将来への不安は強く、わずか1カ月で少なくとも10万人超が国外に脱出したとみられる。

「タリバンは1日3回、肉が入ったうまい食事を無料で食べさせろと農民に強要する」。タジキスタンの国境沿いにある北部タハル州。部族のリーダーを務める30代の男性はため息をつく。

同州は主に小麦や米を作る貧しい農家が多い。タリバンはアフガン制圧後に食事だけでなく、農作物収量の1割を分け前として強奪し始めたという。この男性は「タリバン支配で生活がどんどん苦しくなる。多くの人が国外に脱出した」と話す。

米欧メディアなどによると、タリバン制圧から1カ月で米国に6万人、英国に8000人、イタリアに5000人、ドイツに4000人、フランスに2800人が脱出。周辺国への退避はパキスタンに2万人、タジキスタンに2000人、ウズベキスタンに585人など、少なくとも10万人超がアフガニスタンを去り、退避しようとしている予備軍も数十万人規模にのぼるとの見方もある。

タリバンは7日に首相代行など主要閣僚の33人を発表した。翌8日からカブールで暫定政権下での省庁の仕事も始まったが、情報・文化省は「7割の職員しか働いていない」と話す。

海外駐留軍を支援していた旧政府高官は「タリバンが自宅を没収し、見つかれば殺害される。パキスタンに逃げるしかなかった」と明かす。旧アフガン政府の高官はタリバンに銀行口座を凍結された。汚職で得た裏金などが明るみに出ると、どんな処罰が待ち受けているかわからない。旧政府職員は長らくタリバンと対立していたことで目の敵にされ、行政運営そのものが早くも困難になる兆しがある。

民間調査会社フィッチ・ソリューションズは、タリバン支配下での影響を勘案し、8月末にアフガンの2021年度の経済成長率見通しを当初予想の0.4%増から9.7%減に引き下げた。「多くの国際支援が消失し、通貨下落でハイパーインフレも起こりかねない」とみて、22年度もマイナス成長を予測する。国連開発計画も22年半ばに国民の97%が貧困層に陥る可能性に警鐘を鳴らす。

タリバンはアフガン制圧当初、住民の安全や女性の権利を保障し、包括的な政権をめざすと強調していた。ただ足元では女性の抗議デモを押さえつけるなど強権的な姿勢を見せている。弁護士で活動家でもある女性は「現在の暫定政権は女性を排除し包括的と全くいえない。女性や子供は精神的な問題を抱え始めている」と指摘する。

国連は13日、アフガンの人道支援に向けた閣僚級会合を開き、米欧などは総額12億㌦超(約1300億円)の拠出を表明した。これはあくまで人道支援であり、国際社会はタリバンの暫定政権を国家として承認するのになお慎重だ。タリバンは憲法や国旗の制定なども先送りし、国造りの具体像は見えてこない。

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