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選挙不正の証拠は皆無 「PERIL」著者ウッドワード氏

共著コスタ氏「トランプ氏は進軍中」

「PERIL 危機」を共著したボブ・ウッドワード氏、ロバート・コスタ氏との主なやりとりは以下の通り。(聞き手はワシントン支局長 菅野幹雄)

――「PERIL」という題名の由来は。

ウッドワード氏「バイデン米大統領が就任演説で使った、私たちの危機の冬(our winter of peril)から取った。まさに危険と不確実性、先行きの見通し不良を示す」

――最も重要と考える場面は。

コスタ氏「連邦議会占拠事件の前夜、1月5日だ。トランプ前大統領がペンス前副大統領とホワイトハウスにおり、ジュリアーニ顧問弁護士やバノン元首席戦略官ら側近は道を隔てたウィラード・ホテルで翌日のイベントを法的、政治的、憲法的にどう進めるかを計画していた。プラウドボーイズなど過激派勢力も夜にかけて集結した。違ったシーンが全て絡み合っていることを示した。我々の本は連邦議会占拠事件の経緯を調べる下院特別委員会でも関係者の召喚状に引用された。暴動を誰が指揮したのか。ホワイトハウスや側近の協力はなかったのか。答えの出ていない疑問が残っている」

ウッドワード氏「この期間を通じて安全保障の危機も起きていた。米軍トップのミリー統合参謀本部議長は2020年10月30日、中国は米国がひそかに中国を攻撃する計画だと信じているとの機密情報を得た。1月6日の占拠事件の2日後、ミリー氏は中国側の軍トップの李(作成・統合参謀部参謀長)氏に電話した。李氏は(事件で)米国が崩壊すると本当に心配していた。ロシアもイランも軍事的警戒を強めた。2つ目はペロシ下院議長がトランプ氏が核兵器を使うのを心配し、ミリー氏にそれが起きないよう確証を求める場面。50年この仕事をして最も異常なやりとりの一つだ」

――トランプ氏に近い人々が大統領を止めようとする場面がある。

コスタ氏「情報源がだれかには立ち入らない。だがトランプ氏周辺で感情的になる情報源もいた。できる限りの情報を集め、何事も決めてかからず真実に迫ろうとした。1月6日の事件にトランプ氏は受け身の姿勢だったといわれたが、9カ月の取材で全く受け身でなかったことが分かった。権力に居座るためにあらゆる手段を試していた」

ウッドワード氏「私たちの本当の義務は幾つかの州で選挙が盗まれたという証拠があるかどうかを突き止めることだった。その証拠は何一つなかった。それがトランプ氏の主要な支持者であるグラム上院議員らの判断であり、結論だ」

――トランプ支持者の大半が「選挙が盗まれた」と今も思っている。

コスタ氏「危機は残っていると記した。現大統領のバイデン氏、そして米国が来年やこの先にわたって巨大な試練に直面する。民主主義は綻びが進んだ。真っ二つに割れた有権者、どちらに向かうか全く見えない米国。米民主主義に問われるのは、1月6日の事件は『より悪い展開』のリハーサルなのか否か、ということだ」

――1年前の取材で「米国の民主主義は保たれている」と言っていたが。

ウッドワード氏「1月6日の出来事を直視しなければならない。(選挙人数をもとに)次期大統領を選定する過程をトランプ氏は妨害したかった。ペンス氏がそれに従って過程を妨害することはそれほど困難ではなかった。憲政の大惨事が目前だった。ペンス氏は憲法に沿って義務を果たしたが、本に記したように他の方法を模索していた。トランプ氏を怒らせたくなかったのだ」

――共和党はトランプ氏とどう向き合うか、ジレンマを抱えているのでは。

コスタ氏「22年の中間選挙に向け、トランプ氏をリハビリしようと試みている。共和党は同氏が政治資本を支配しているといまだにみている。過去の選挙への不満でなく政策に集中するようトランプ氏に促す場面が、共和党の課題を端的に示している」

ウッドワード氏「グラム上院議員はゴルフ中にトランプ氏を批判し、直言している。共和党は2020年から卒業したいと思っている。それはバイデン大統領がいまやろうとしていることでもある。幾分の成功もあったが、うまくいっていない部分もある」

――新型コロナウイルスの不安下の選挙でバイデン大統領の勝因はなんだったのか。

コスタ氏「『米国の魂』というメッセージが黒人に響いた。市民運動の旗手で黒人下院副院内総務のクライバーン氏の支持もあった」

ウッドワード氏「バイデン氏は700万票差で勝ったが、アリゾナ、ウィスコンシン、ジョージアで4万5000票が入れ替わっていたらトランプ氏が勝っていた。非常に接戦の選挙だった。トランプ氏が新型コロナウイルスへの対応を誤った。真実を国民に語ることができたのに、それをしなかった」

――バイデン政権の支持率が低迷している。

コスタ氏「大型の経済救済策にこだわった過程を詳述した。彼は非常に得意になったのだと思う。だが夏にアフガニスタンからの米軍撤収を巡って決めた方針が支持率反落のきっかけになった。オースティン国防長官やブリンケン国務長官が(全面撤収の)進め方に警戒的になり、北大西洋条約機構(NATO)も懸念を国務長官に伝えたが、彼は決然と撤収を実施し(その混乱で)下降が始まった。インフラ投資法案が成立したが、ここに支持が集まるかが数カ月ではっきりする」

ウッドワード氏「世論調査には疑問を持つ。大統領を巡っては一気に流れが加速することも、反対に向くこともある。何年かして何かが起き『いや、彼はよくやっている』となることもある」

――バイデン氏の挽回で鍵を握るのは。

コスタ氏「就任早々に急進左派のサンダース上院議員に『一緒にやりたい』と話した。中道派として通したバイデン氏が急進派と組んだ。変革者になりたかったのだ。マンチン上院議員など中道派は大規模な対策に抵抗したが、バイデン氏は逆に同調を求めた。共和党がバージニア州の知事選を制したことで、民主党は自らがどんな存在でどこに向かっているかが問い直される。大統領自身と民主党の22年の中間選挙への大きなチャレンジだ。上院や下院の予備選でどの勢力に肩入れするか、ハリス副大統領の役割、そして自身の24年大統領選の出馬など、質問に答えるよう迫られる」

――中間選挙、そして次の大統領選への見通しは。

コスタ氏「2024年に何が起きるかは知らない。だがトランプ氏について、推測でなく実際に何をして、どこにいて、何を言っているかを理解することが重要だ。トランプ氏は集会で人々を活気づけている。全国的に注目されないが前大統領は進軍中だ。共和党も選挙法を改正して(選挙を有利にしようと)進軍している。我々の仕事は全ての動きを報じること。それを経てトランプ氏が出馬するか、勝つかどうかという質問に答えることができる」

ウッドワード氏「実際に危機の局面にいる。トランプ氏だけでなく、すべての安全保障問題、バイデン氏が国をどう率い、国民が信頼しているかなど、あらゆる分野に危機が満載されている。全て日本に関係してくる。対中国、対北朝鮮などの安保問題はとりわけだ。少なくとも太平洋地域が安定の時期にあると言うことはできない」

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