ロシア「併合」地域から住民退避、南部の苦戦隠せず

【ウィーン=小川知世】ロシアが併合を一方的に宣言したウクライナの占領地域の維持に苦労している。南部ヘルソン州の親ロシア派は攻撃激化を理由に住民に退避を呼びかけた。新たに動員した兵士の戦死も判明し、訓練が不十分なまま前線に送られた疑いが強まっている。
ヘルソン州の親ロシア派幹部は13日、住民の退避支援をロシアに求める動画を公開した。ロシアの副首相は同日、無料の滞在場所や定住先を提供するなどの支援を決めたと発表した。同国南西部のロストフ州知事は14日に受け入れを始めると明らかにした。
ウクライナは反転攻勢を続けている。過去1カ月間に東・南部で600以上の集落を奪還したと13日に発表した。このうちヘルソン州は75を占める。
ずさんな動員も浮き彫りになっている。13日には南部チェリャビンスク州当局が部分動員令で派兵された5人の死亡を認めたと明らかになった。
英BBC(ロシア語版)は戦死した兵士の知人から入手した動員兵の話として、一度も射撃訓練をうけずにヘルソン州の前線に送られたとの証言を伝えた。
ロシア国防省は9月21日発令の部分動員令の対象は専門技術や戦闘経験がある予備役で、1カ月ほど訓練すると説明していた。動員の「第2波」として一部の地方当局が追加の徴兵を命じられたとも報じられ、兵力の損失を埋めるために追加的な動員が続くとの見方が強まっている。
ロシアがウクライナへの「報復」と位置づけて大規模な攻撃を展開した背景にはロシア国内で高まる動員などへの不満から目をそらす狙いもあったとみられる。
ロシア軍はイラン製ドローンでウクライナのインフラ設備を攻撃している。米戦争研究所はイラン当局関係者がロシア兵に操作を指南している可能性を12日に指摘した。米紙ニューヨーク・タイムズは、ウクライナ政府高官の話としてイランと対立するイスラエルがドローン攻撃に対抗するための情報を提供していると報じた。
プーチン政権が追い込まれるなかで米欧は核使用への警告を強めている。ロイター通信によると、欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)は13日、ロシアが核を使えば米欧が「核ではないが、ロシア軍が壊滅するような強力な対応」を取ると述べた。

2022年2月にロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって1年になります。戦況や世界各国の動き、マーケット・ビジネスへの影響など、関連する最新ニュースと解説をまとめました。
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