イラク北部で爆発、弾道ミサイルか 死傷者なし

【ワシントン=中村亮、イスタンブール=木寺もも子】イラク北部クルド人自治区のアルビルで現地時間13日、複数の爆発があった。クルド自治政府によると12発のミサイルが撃ち込まれた。複数の米メディアはイランからの弾道ミサイル攻撃だと報じた。米領事館近くにも着弾したとされるが、米国やクルド自治政府は死傷者は出ていないとしている。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると米領事館から2キロメートル以上の位置に着弾した。ミサイル攻撃の正確な標的は明らかになっていない。国務省の報道担当者は「許しがたい攻撃と暴力行動を非難する」と言明した。イランのメディアSNNは、自国の関与を否定するイラン議会報道官の発言を伝えた。
イラクでは同国の親イラン系武装勢力が米国の施設や米軍の駐留拠点に対してロケット弾などによる攻撃をたびたび実施してきたが、イランからミサイルを直接発射するのは珍しい。米国ではイランが直接の関与を隠して米国との軍事衝突を避けつつ、米国を威嚇する戦略をとっているとの見方が多い。
最近では2020年1月に米軍がイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官をイラクで殺害し、イランがイラクの米軍拠点に弾道ミサイルで報復攻撃を仕掛けた。
米国とイランは15年に結んだイラン核合意の再建に向けた協議を重ねてきた。今回のミサイル攻撃で両国の対立が深まれば合意が遠のく可能性がある。協議はロシアによる新たな要求で一時休止を余儀なくされ、最終合意に暗雲が広がっていた。
一方、イランの国営テレビではイラク北部からリポートした記者がミサイル攻撃の標的が「イスラエルの秘密基地」だった可能性があると主張した。アルビル県知事は地元メディアに対し、イスラエルの基地などないと話した。
イランの別のメディアは、対立するサウジアラビアとの間で続いていた直接協議をイラン側が停止したと報じた。イラク政府によると、次回の協議は16日にイラクの首都バグダッドで予定されていた。
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