ロシア軍が核研究施設を攻撃か ウクライナが非難
ウクライナの原子力規制当局は6日、北東部にある第2の都市ハリコフの核物質を扱う研究施設がロシア軍の攻撃を受けたと発表した。当局はロシアが再び核施設を攻撃したと非難している。南東部での民間人の退避は同日もロシア軍の攻撃で見送られた。両国は7日にも3度目の停戦対話を予定するが、打開は見通せない。
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ウクライナ側の発表によると、ハリコフの国立物理技術研究所の敷地内にある施設にロシア軍がロケット弾を撃ち込んだ。変電所が破壊され、複数の施設の外壁などにも損傷が確認された。職員が被害の全容の把握を急いでいる。
研究所は旧ソ連時代に設立し、核物質が保管されている。施設の損傷次第で大規模な被害につながる恐れがあった。ウクライナ当局は「(ロシアが)再び核テロを仕掛けた」と糾弾した。
ロシア軍はこれまでに閉鎖済みのチェルノブイリ原子力発電所のほか、稼働中の南部ザポロジエ原発を制圧した。国際原子力機関(IAEA)は6日の声明で、同原発の運営がロシア軍の指揮下に置かれ、通信網が遮断されたとして懸念を表明した。

ロシア軍はほかの原発の掌握も狙っているとみられる。ロシアは「ウクライナが核兵器の開発を企てている」と一方的な主張を展開し、侵攻や原発制圧を正当化している。
ロシア軍が攻撃を緩める兆しはない。南東部の港湾都市マリウポリで計画した民間人の退避は2日連続で実現しなかった。両国が5、6日に交戦を一時的に止めて「人道回廊」を設けることで合意したが、ウクライナはロシア軍の砲撃で安全が確保できなかったと訴えた。
ロシアは西部や民間インフラにも攻撃対象を広げている。中西部ビンニツァでは砲撃で空港が全壊した。ウクライナメディアによると、同国の教育科学相はこれまでに211の学校が攻撃で破壊されるなどしたと明らかにした。マリウポリにある欧州安保協力機構(OSCE)の建物が砲撃を受けて損傷したとの情報もある。
ロシア国防省は防衛企業への攻撃も警告した。ウクライナのゼレンスキー大統領は多数の周辺住民や従業員が犠牲になる恐れがあるとして攻撃停止を強く訴えた。

外交による停戦のメドは立たないままだ。ロシアとウクライナの3度目の停戦対話は7日にも開かれる見通しだが、ロシアのプーチン大統領は6日のトルコのエルドアン大統領との電話協議で「ロシアが出した条件をウクライナが履行しなければ軍事作戦は停止しない」とこれまでの主張を繰り返した。
ロシアはウクライナに非武装化や中立化などを要求している。まず侵攻を止めるべきだとのウクライナ側の要求を聞き入れず、主要都市や民間施設、原発などを標的にした攻撃を続けて降伏を迫っている。ウクライナの抵抗が続くなか、プーチン氏がさらなる強硬手段に打って出ることも予想される。
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