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EU脱炭素方針、ドイツ・スペイン反発 原発回帰を危惧

(更新)

欧州連合(EU)の欧州委員会が1日に原子力を脱炭素に貢献するエネルギーと位置づける方針を発表したことについて、ドイツやスペインが反発している。EUは2011年の日本の原子力発電所事故をきっかけに安全規制を厳格化してきたが、今回の決定が原発回帰を加速させると危惧しているためだ。脱炭素の手法をめぐり、原発依存度の高いフランスや石炭に頼る東欧との温度差が際立っている。

EUは経済活動が持続可能性のある事業かどうか仕分ける制度「EUタクソノミー(分類法)」を設けており、新たに原子力と天然ガスをこれに追加する。「50年までに域内の温暖化ガスの排出を実質ゼロにする」とのEU目標に貢献する経済活動と認めることで、資金調達をしやすくする狙いがある。

欧州委の発表を受け、22年末に脱原発を目指すドイツのハベック経済・気候相は「金融市場が(欧州委の判断を)受け入れるかどうか疑わしい」と現地メディアに語った。ハベック氏が所属する与党「緑の党」は脱原発を主要な政策目標に掲げる。11年の福島第1原発事故をきっかけに同党が躍進した経緯があるだけに、原発導入を後押ししかねない動きには神経をとがらせている。

欧州委の方針には他の加盟国も相次ぎ反発した。スペインのリベラ環境保護相は「EUのエネルギー移行で誤った信号を発信する」と指摘。温暖化対策で原発の利用は意味をなさないと主張した。オーストリアのゲウェッスラー気候変動・エネルギー相も「環境に有害だ」として欧州委に法的措置を取る構えをみせている。

原発は稼働中に二酸化炭素(CO2)をほとんど出さない。天候にも左右されず、安定した電力を供給できる。19年時点でEUの総発電量の26%を占める主要電源だ。ただ、有害な放射性廃棄物が出るため、タクソノミーで「グリーン電源」とすべきかどうか加盟国間で激しい議論が続いていた。

マクロン仏大統領は21年11月、国内で原発の建設を再開すると表明するなど原発回帰の流れが加速している。同12月半ばにはオランダが総額50億ユーロ(約6500億円)を投じ、原発2基の新設計画をまとめた。欧州委の決定には、フランスなどの強い働きかけが奏功したとみられている。

石炭に依存する東欧諸国にとってもCO2をほとんど出さない原発は魅力的に映る。ポーランドは原発導入を目指しており、原子力が脱炭素に資すると認めるように訴えていた。

欧州委は1月中にも正式案を公表する考えだ。加盟各国の議論や欧州議会の審議を経て成立する流れだが、原発推進国と反対国の溝が深まり、議論が紛糾する恐れもある。

(井上航介)

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