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ロシア軍、欧州最大級の原発制圧 核リスク顕在化

(更新)

ウクライナ南部にあるザポロジエ原子力発電所が4日、ロシア軍に制圧された。両国政府が発表した。国際原子力機関(IAEA)によると、周辺で放射線量に変化はないという。原発の制圧で「核の脅威」をあおるロシアに米欧は非難を強めた。軍事攻撃を受けるといった原発のリスクも顕在化した。

ザポロジエ原発は欧州最大級で、出力100万キロワットの原子炉が6基ある。ウクライナのクレバ外相によると、ロシア軍が砲撃し、4日未明に火災が発生した。ウクライナ原子力規制当局によると、1号機の原子炉補助建屋が損傷した。AP通信は4日、ウクライナ原子力企業の話として、砲撃によりウクライナ兵3人が死亡したと報じた。

ウクライナでは旧ソ連時代の1986年にチェルノブイリ原発で爆発事故が起きた。同国原子力規制当局は攻撃で核燃料を冷却できなくなれば「チェルノブイリや福島第1原発事故を超える重大な放射性物質漏れが起きかねない」と述べた。IAEAのグロッシ事務局長は4日の記者会見で「原発の状況はもろくて不安定だ」と述べた。

ロシア軍は原発を主な制圧目標にしているようだ。侵攻を始めた2月24日、廃炉中のチェルノブイリ原発を占拠。IAEAは3日に非難決議を採択したが、ロシア軍は今度は稼働中のザポロジエ原発を制圧した。地元エネルゴダル市のオルロフ市長は4日、「ロシア軍の装甲車の隊列が市内に侵入し、直ちに原発に向かった」と指摘した。

ウクライナでは4カ所に計15基の原発がある。ロシア軍は今後、南部の南ウクライナ原発、西部のロブノ原発やフメリニツキー原発も標的にしかねない。ウクライナ内務省高官は2日、南ウクライナ原発にロシア軍の部隊が向かっている情報があるとして、ロシア軍の攻撃があるかもしれないとSNSに投稿した。

これらの原発も今回のように攻撃されれば、重大な事故につながりかねない。グロッシ氏は4日、原子炉や燃料プール、放射性廃棄物の貯蔵施設など「あらゆる施設の物理的な安全性」が重要だと指摘した。

日本の岸田文雄首相は4日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話協議し、原発攻撃について「許されない暴挙で、福島第1原発事故を経験した国として最も強い言葉で非難する」と伝えた。英国のジョンソン首相は4日、ゼレンスキー氏との電話協議で「プーチン大統領の無謀な行動は欧州の安全の直接的な脅威」との見解を示した。

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は原発への攻撃について「この無謀な戦争を終わらせる重要性を示している」と述べた。

ロシアには電力網を支配し、ウクライナに降伏を迫る狙いがありそうだ。米国防総省高官は4日、「ロシアがウクライナ国民の抵抗を難しくするため原発を取引材料に使う可能性がある」と述べた。電力供給遮断をちらつかせて脅すシナリオに触れた発言だ。

安全保障が専門の鶴岡路人慶大准教授は「ウクライナは原発への依存度が高く、ロシアの制圧は国民の生死を握られたのにも等しい」と語る。ウクライナはロシア産ガスへの依存を下げ、発電量に占める原発比率は1990年の25%から2020年に51%まで上昇。欧州ではフランスやスロバキアに次ぎ高い。

調査会社スタティスタによると、ウクライナの19年の電力輸出額は約3億6000万ドル(415億円)で欧州首位ドイツの約12分の1。ロシアがウクライナの電力網を支配しても欧州への影響は限定的とみられる。

プーチン氏は軍の核抑止部隊に高度な警戒態勢に移るよう指示して核による脅しを強める。原発を「人質」にし、ウクライナを支える欧米を威嚇する思惑もありそうだ。

ロシアのプーチン政権は侵攻の口実として、ウクライナが核兵器を開発しているとの根拠のない主張をしてきた。原発を制圧し、核兵器開発の「証拠」をロシアがでっち上げるとの観測もある。

原子力関連施設は過去にも標的となった。イスラエルは1981年にイラクの首都バグダッド近郊にあった研究施設の原子炉を爆撃で破壊した。2007年にはシリア東部にあった原子炉とみられる施設も空爆した。近年はサイバー攻撃の脅威も高まっている。

世界原子力協会によると、ウクライナの周辺ではロシアのほか、ベラルーシやルーマニア、ブルガリアにも原発がある。今回の侵攻をきっかけに地域情勢が不安定化すれば、攻撃されるリスクが高まる恐れもある。

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ウクライナ侵攻

ロシアがウクライナに侵攻しました。NATO加盟をめざすウクライナに対し、ロシアはかねて軍事圧力を強めていました。米欧や日本は相次いでロシアへの制裁に動いています。最新ニュースと解説をまとめました。

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