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ベラルーシ選手亡命、強権体制の抑圧映す 欧米が非難

ベラルーシ代表のツィマノウスカヤ選手は警察官に助けを求め、亡命の意向を伝えた(1日、羽田空港)=ロイター

東京五輪のベラルーシ代表選手が本国に帰国を命じられたとして、ポーランドに亡命を求めた問題が波紋を広げている。強権的な体制を敷くルカシェンコ大統領は五輪を国威発揚の機会ととらえ、政権に批判的なアスリートに圧力を強めていた。選手の帰国も同氏が指示したとの見方が多い。欧米は非難を強めており、国際オリンピック委員会(IOC)も調査に乗り出した。

「圧力をかけられ、同意なく帰国させられそうになっている」。ベラルーシ代表のツィマノウスカヤ選手は1日、羽田空港で警察官に助けを求め、2日に東京のポーランド大使館に移動した。ポーランドは欧州へ亡命を希望する同選手に人道的査証(ビザ)を発給した。近く出国する見通しだ。

同選手は2日の陸上女子200メートルに出場予定だった。SNS(交流サイト)にコーチへの不満を投稿したことが当局批判ととらえられ、帰国を命じられたとみられている。同選手は帰国後に投獄される恐れがあるとして、IOCに介入を訴えていた。

一連の経緯を巡っては「欧州最後の独裁者」と呼ばれるルカシェンコ氏の意向が働いたとの見方が多い。ベラルーシでは2020年8月の大統領選で同氏の6選が発表され、当局は退陣を訴える抗議運動への圧力を強めた。政権批判や欧米による制裁に神経をとがらせる同氏が見せしめとして処分を画策した可能性がある。

反体制派幹部のラトゥシコ元文化相は1日、「ルカシェンコ氏が自らの指示」で選手を連れ去ろうとしたと訴えた。同国の政治評論家カルバレビッチ氏もロシアメディアの取材に「現在のベラルーシで当局を公に批判すれば、反逆罪に等しいとみなされてしまう」と指摘した。

ルカシェンコ氏は国際的なスポーツ大会を利用して国威の発揚を図ってきた。開幕前には「(五輪での成功は)我々を制裁で苦しめようとする国々への答えになる」と主張。7月29日にはメダル獲得が進まない状況に「どの国よりもスポーツに出資しているのにこの結果は何だ」などと語り、怒りをあらわにしていた。

当局による圧力の矛先はスポーツ界全体に向かっている。ベラルーシのアスリートは昨年8月に弾圧に反対する書簡を公開し、2100人以上が署名した。抗議運動への支持を表明した後、逮捕されたり代表チームから外されたりして五輪出場の道を断たれた選手もいる。過去の五輪メダリストらが拘束を避けるために出国を余儀なくされたケースもある。

ツィマノウスカヤ選手が帰国を命じられた時のやり取りを録音したとされる音声には、コーチとみられる男性が「愚かさで人々の運命を台無しにしかねない」などと圧力をかける様子が記録されている。同選手を支援する日本在住のベラルーシ人によると現在も当局はベラルーシに残る家族に対し、同選手に帰国を促すように圧力をかけている。同選手の夫はすでに隣国に出国した。

欧米は非難を強めている。ブリンケン米国務長官は2日、「国境を越えた抑圧行為だ。五輪精神に反し、基本的権利とかけ離れ、容認できない」とツイッターで批判した。ロイター通信によると、欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表の報道官もルカシェンコ氏による「残忍な抑圧」のさらなる証拠だと非難する声明を出した。

IOCは3日、ツィマノウスカヤ選手の問題について正式な調査を始めると明らかにした。IOCは20年12月に選手が「政治的な差別」から守られていないとして、ルカシェンコ氏らをIOC関連の活動から除外する措置をとった。同氏はベラルーシ・オリンピック委員会の会長を退くと2月に表明したが、後継には長男が就任した。IOCなどがルカシェンコ氏に効果的に圧力をかけられるかも今後の焦点となる。(小川知世)

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