/

インド、初の国産空母を就役 中国の海洋進出に対抗

【ニューデリー=馬場燃】インド海軍は2日、南部ケララ州で初の国産空母を就役させた。インド太平洋などで勢力を広げる中国に対抗する狙いがあり、2023年半ばまでに戦闘機も搭載した完全運航の体制が整う見通しだ。インドは国内の防衛産業の底上げを進める方針だが、最新鋭の部品の内製化など課題も少なくない。

モディ首相は同日に開かれた就役式で「国産空母はインドがめざす自立した防衛体制を象徴している」と強調。「インド太平洋は長年にわたり安保上の脅威にさらされてきたが、強力になった海軍で対峙することができる」と語った。

インドメディアによると、初の国産空母「ビクラント」の建造コストは約2000億ルピー(約3500億円)。全長は262メートルで、30機の戦闘機を搭載できるとしている。11月をメドに戦闘機を載せた訓練を始め、23年半ばの完全運航をめざす。インド海軍の空母は、13年に購入したロシア製に続いて2隻目となる。

日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国の枠組み「Quad(クアッド)」は5月の首脳会談で、中国を念頭に海洋監視での協力を盛り込んだ共同声明を発表した。中国はインド太平洋や東・南シナ海などへの海洋進出を活発化しており、インドは国産空母を利用して警戒を強める。

インドは自国の防衛産業の底上げを進め、自前の軍事力を引き上げる方針も掲げ始めている。

インド国防省は8月下旬、ミサイルのスイッチなど780の防衛部品の輸入を禁じるリストを公表した。21年末以降で第3弾となる輸入禁止措置で、合計約3700の防衛部品を国産に順次切り替える。インドは過去5年でロシアから約5割の兵器を調達しているが、ロシア依存からの脱却を進める思惑もある。

今回の国産空母には100を超えるインド国内の中小防衛企業が製造にかかわったとされる。ただ国産の部品調達比率は8割弱にとどまり、まだ輸入に頼らざるを得ない部品も多いのが実情だ。インドは高精度の監視レーダーシステムの開発などを自前で進める体制づくりが求められている。

インドは国産空母の就役にこぎつけたものの、軍事力で勝る中国の脅威は依然として消えない。国境の係争地を巡る両国の対立も続いている。20年5月からインド北部ラダック地方の係争地でにらみ合いが始まり、翌月には45年ぶりに死者を出した。印中両軍は司令官レベルの協議を重ねてきたが、緊張緩和に向けた解決策を見いだせていない。両軍は係争地に総勢10万人程度を引き続き配備しているとみられる。

印中はそれぞれ係争地で道路や橋といった戦闘に必要なインフラの増強も進めている。インドのジャイシャンカル外相は「中国との関係は正常でない」との認識を示す。足元で米国やフランスなどにインドで兵器を共同生産するよう呼びかけている。ジャイシャンカル氏はシン国防相と8日にも日本を訪れ、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)で軍事協力の強化を話し合う予定だ。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません