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2回接種しても…知っておきたいブレークスルー感染

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新型コロナウイルスのワクチンの2回接種を終えてから感染する「ブレークスルー感染」が目立ってきた。接種が優先的に進められてきた病院や高齢者施設でもクラスター(感染者集団)の発生が相次いでいる。2回接種した人は感染しても未接種者より軽症で済むケースが多いが、体調の変化に気付きにくく対応が遅れる恐れがある。ブレークスルー感染はなぜ起きるのかまとめた。

デルタ型の突破力が強い? 重症化リスクは低く

ブレークスルー感染とはワクチンの接種完了後に感染すること。ブレークスルーはワクチンによる防御の「突破」を意味する。インドで見つかったデルタ型は感染力が高く、ワクチンの感染予防効果は5~9割といった報告がある。未接種の場合よりも、感染者が5~9割少なくなることを意味している。接種しても感染リスクは残る。一方、発症や入院を予防する効果は8~9割と報告され、重症化するリスクは低い。抗体が減っても「免疫記憶」が働き、重症化や死亡を防いでいるようだ。ブレークスルー感染は、そもそもワクチン効果は100%でないことや、抗体がつくられる量に個人差があること、接種から時間が経過すると抗体量が減少するためとみられる。

実際、福井県越前市の介護老人保健施設で9月に2回接種済みの入所者と職員約30人が感染したクラスターでは、いずれも軽症や無症状だった。担当者は「これまでの発生事例と比べても症状が軽い人が多かった」と分析する。厚生労働省はコロナに感染した高齢者の致死率について、2回接種した人は未接種者の5分の1程度になるとのデータを示している。

英キングス・カレッジ・ロンドンなどは2回目のワクチン接種から7日後以降に検査で陽性になった約900人を調べた。2回接種を終えてから感染した人のうち、症状が発症から28日以上続いた人は約5%だった。未接種の感染者のうち同様に症状が続いた人は約11%だったことから、感染前に接種していると後遺症の発生が半分になった。

イスラエルでは3回接種しても感染者

イスラエル保健省などは2回目の接種完了が早いほど感染予防効果が下がりやすいと分析。7月の1週間分の調査では、2回目接種を1月に終えた人の場合、16~59歳では10万人当たり74件発生したが、2回目を7月に終えた人では同10件にとどまった。イスラエルでは8月から3回目のワクチン接種が始まったものの、3回接種しても感染者が出ている。

シンガポールでは8月上旬、ワクチン普及を背景に行動規制を緩和したが、感染者が急増。ブレークスルー感染も相次ぎ、9月から3回目接種を60歳以上に始めた。同国政府は「ワクチン接種完了者が感染後に重症に至る割合は1%未満と、未接種者の約6%に比べて低い」とワクチンが重症化を防ぐ効果を強調している。

日本、年内にも3回目接種を準備

厚労省の調査では9月15~17日の新規感染者約1万4千人のうち2回接種後の感染者は1335人で全体の9%を占めた。3回目接種を実施している海外の先行事例を踏まえ、同省は国内でも追加接種(ブースター接種)の必要があると判断。17日には3回目の追加接種について、2回目の接種が終わってから8カ月以上経過した後に実施する案を提示した。ブレークスルー感染は症状が軽いことが多いとされているものの、感染そのものに気付きにくく、無症状のまま他人にうつしてしまう恐れが指摘されている。同省は2回接種した場合でも消毒や手洗いといった感染対策を呼びかけている。

ブースター接種とは新型コロナウイルスのワクチン接種を終えた人の免疫をさらに強化するため、3回目の接種をすること。3回目接種については、同じ種類のワクチンを3回打つ場合や変異ウイルスに対応して改良されたワクチンを打つ方法、メーカーの異なるワクチンを組み合わせる混合接種など、いくつかの方法が検討されている。これまで中国製のワクチンを接種してきたアジアなどでは医療関係者らが接種完了後に感染する事例が増えており、欧米製との混合接種が検討されている。

フランスでは9月1日から高齢者らを対象に開始し、米国も24日から始めた。米食品医薬品局(FDA)の承認と米疾病対策センター(CDC)の勧告を受け、追加接種が可能になった。米バイデン大統領は会見で「3月までにファイザー製を接種完了して対象者であれば今、追加接種が可能だ。追加接種をしてください」と呼びかけた。自身も追加接種の対象だとして、できるだけ早く接種するという。追加接種はファイザー製の2回目を接種してから6カ月後となる。対象は65歳以上と基礎疾患を持つ重症になるリスクの高い人、医療従事者ら感染リスクの高い職に就く人の全米6000万人で、このうち24日時点で接種可能となるのは2000万人という。

菅義偉首相も28日の会見で「3回目の接種を見据え、既に2億回の契約も結んである。年内にも3回目接種が開始できるよう準備を進める」としている。ただ、世界保健機関(WHO)はブースター接種の必要性を裏付ける確かな科学的根拠はないとし、ワクチン供給の格差を長引かせるだけだと批判している。

グラフィックス 佐藤綾香
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