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デルタ・アルファ・ミュー…よくわかるコロナ変異型

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新型コロナウイルスを巡り世界各地で変異ウイルスが相次ぎ報告されており、現在はデルタ型が世界の感染者の9割超を占める。変異ウイルスは感染力が従来型よりも強く、毒性も変化するなど変遷が激しい。世界保健機関(WHO)が感染力などに応じて分類している変異型ウイルスの特徴などを追ってみる。

WHOはコロナの変異ウイルスを「懸念される変異型(VOC)」と「注意すべき変異型(VOI)」に分類している。VOCとは感染力や重症度が増し、ワクチンの効果を下げるといった性質の変化がみられた変異ウイルスのことだ。VOCに続き、感染力やワクチン効果に影響を与える可能性のある種類をVOIと指定している。9月現在、VOCに4種類、VOIに2種類の変異ウイルスを分類している。WHOは9月20日、イータ型、イオタ型、カッパ型について、VOIの下の分類となる「監視中の変異型」に格下げした。

アルファ型

2020年9月に感染例がみつかり、当初は英国型と呼ばれていた。ウイルスの表面にある突起状のスパイクというたんぱく質に「N501Y」という変異がある。スパイクは約1300個のアミノ酸からなるが、N501Yの場合は501番目のアミノ酸が従来のN(アスパラギン)からY(チロシン)に置き換わった。疫学的な解析などからこの変異があると、感染力が高まるとされている。国立感染症研究所は、感染力を従来の約1.3倍としている。海外の報告では従来と比べて死亡率は61%増え、入院リスクは約1.5倍とした。米ファイザー製ワクチンを2回接種すると、感染で約95%、発症で97%の予防効果があるとイスラエルの研究者らが報告している。

ベータ型

ベータ型の発生は20年5月といわれている。南アフリカで確認されたことから南ア型と呼ばれていた。N501Yに加え免疫から逃れる「E484K」という変異を持つ。感染力が約5割高く、入院時の死亡リスクが増えた可能性が指摘されている。ベータ型が流行した際の中東のカタールの報告では、ファイザー製ワクチンを2回接種後の感染予防効果は75%としている。重症化予防の効果などの報告はあまりないが、日本感染症学会は「一定の効果はあると考えられる」との見解を示す。

ガンマ型

ガンマ型は20年11月にブラジルで見つかり、現在もブラジルやチリなど南米を中心に流行している。ベータ型と同様にN501YとE484Kの変異を持つ。感染力は従来の1.7~2.4倍との報告があり、入院リスクが増した可能性がある。ワクチン接種後の血液の分析から、ワクチンの効果を弱める可能性も指摘されている。

デルタ型

インドで初めて確認され、現在の感染の主流となっている。スパイクに「L452R」という変異がある。これまで確認された変異ウイルスの中で最も感染力が強いとされ、感染力はアルファ型より5割程度高いとされる。デルタ型はアルファ型に比べ、入院確率が2倍に膨らむとの研究結果もある。デルタ型は5月ごろから一気に流行し、2~3カ月で世界の新規感染の9割超に達した。

デルタ型に対するワクチンの有効性を巡っては、国際基準として重要な査読付きとそうでないものを含め、様々な研究結果が公表されている。米ファイザーと独ビオンテック、米モデルナ、英アストラゼネカ、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、それぞれのワクチンがデルタ型に対しても有効であるとしている。

イプシロン型・ゼータ型

イプシロン型は米国で見つかった変異型。ゼータ型はブラジルで見つかった変異型。ともに発生率が下がったため、WHOはVOIから監視が必要などとする扱いに引き下げた。

イータ型

イータ型は20年12月に英国など複数の国で報告があった変異型。スパイクにE484Kの変異を持つ。体の免疫から逃れやすくなり、ワクチンでできた抗体の効果が弱まる可能性がある。ただ、ベータ型やガンマ型が持つ感染力を強める変異N501Yはない。国内でも18件確認されている。20年12月以降に日本に入国・帰国した陽性者のゲノム解析結果を厚労省が集計して判明した。9月中旬、VOIから引き下げた。

シータ型・イオタ型

シータ型はフィリピンで見つかった変異型。発生率が下がったため、WHOはVOIから監視が必要などとする扱いに引き下げた。イオタ型は米国で見つかった変異ウイルスでVOIに分類したが9月中旬、格下げした。

カッパ型

インドで見つかった。デルタ型と同様にL452Rの変異が起こっている。日本ではこれまでに検疫で19人確認された。WHOはVOIの下の分類となる監視中の変異型に格下げした。

 新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真(米国立アレルギー感染症研究所提供)=共同

ラムダ型

20年にペルーで初めて報告され、中南米地域では感染が拡大している。米国や欧州などでも見つかっている。WHOはVOI指定に加え、「感染力が高く、抗体に対する抵抗力がある可能性がある」と指摘している。日本ではペルーに滞在歴があり7月20日に羽田空港に到着した30代女性から見つかった。空港の検疫所で新型コロナの感染が分かり、その後の詳しいゲノム解析で変異型が判明した。

ミュー型

21年1月にコロンビアで見つかった変異型。WHOは8月30日付でVOIに加えた。南米のほか、欧州でも大規模な集団感染を起こした事例があるという。ミュー型の変異についてWHOは「免疫逃避の性質をもつ可能性がある」としている。N501YとE484Kと呼ばれる変異がある。まだ予備的な研究にとどまるが、ワクチンを接種した人や感染から回復した人の血液を使った実験では、ミュー型に対して抗体の効き目が下がるという結果が出ているという。WHOは「さらなる研究が必要」と指摘する。

日本では空港検疫で6月と7月にミュー型を2例確認している。国立感染症研究所のこれまでの検査結果を厚労省が改めて集計した。2人はそれぞれアラブ首長国連邦(UAE)と英国から到着し、無症状だったという。

変異型、増殖時のコピーミスで発生

新型コロナの遺伝情報はRNAという物質に刻まれている。RNAは4種類の分子が約3万個並んだ構造をしている。分子の並び方をもとにアミノ酸が作られ、アミノ酸が連なるとたんぱく質になる。

ウイルスが感染した細胞の中で増殖しようとRNAを複製する際、分子の一部が置き換わったり欠落したりするコピーミスが起こる。これが変異だ。変異が起きると作られるアミノ酸の種類が変わり、たんぱく質の構造や性質が変わる場合がある。その影響で、ウイルスの感染力などの性質が変わることがある。

感染を繰り返す中で変異は蓄積する。変異の起きる速さはウイルスの種類によって異なるが、新型コロナは約2週間に分子1つのペースで変化している。変異型の種類が増えると、まれに感染力や病原性が強いウイルスが生まれる。

アルファ・ベータ…名称はギリシャ文字から

WHOは5月末、新型コロナウイルスの変異型の名称について、ギリシャ文字のアルファベットを使う方針を示した。ギリシャ文字はアルファ(α)からオメガ(ω)まで全24種類ある。現在は12番目のミュー(μ)まで使われている。これまで最初に確認された国名を取って「英国型」「インド型」などと表現されることも多かったが、特定国への偏見や風評被害を回避するため、変更に踏み切った。次に変異型が指定されれば「ニュー型(ν)」次いで「クサイ型(ξ)」とみられる。

グラフィックス 竹林香織 荒川恵美子
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