株、ついに3万円 バブル期水準まで押し上げた複合要因
15日午前の東京株式市場で日経平均株価がついに3万円の大台に乗せた。取引時間中としては1990年8月以来、30年6カ月ぶり。もともと先高観の強さは顕在だったが、米中市場が休場のなか売り方の買い戻しが株価上昇に拍車をかけた。コロナショックから一転、バブル期にみた3万円台乗せの達成感から、ひとまず上値を追う動きは一服する可能性が高い。
週初にここまで急上昇するとは――。市場参加者からはこんな声が多く聞かれた。複数の材料による「複合的な要因」(大和証券の壁谷洋和チーフグローバルストラテジスト)が背景にある。1つは米景気対策の早期成立への期待が強まったこと。米議会上院の弾劾裁判は13日、トランプ前米大統領に無罪評決を下した。「意外なほど早く終結し、米議会が景気対策に集中して取りかかれるとの期待が高まった」(大和の壁谷氏)と指摘する。前週末の米市場で主要3指数がそろって過去最高値で終えていたことで、投資家心理が上向き続けた。
日米ともに企業業績の発表がおおむね終わり、良好な着地を見せたことも買い安心感につながった。米ファイザーなどが開発した新型コロナワクチンが国内で初承認されたとの報道も重なった。
みずほ証券の中村克彦マーケットストラテジストは、3万円への上昇ピッチの速さをみて、米中休場による突発的なダウンサイドリスクが少ないという安心感に加え、「週初から海外投資家が注文を出してくることは少ない。実需の買いというより、3万円前後にあった需給要因からショートスクイーズ(売り方の買い戻し)が入ったのではないか」と分析する。12日時点の日経平均は2万9500円程度で、225種のPBR(株価純資産倍率)の1.3倍に相当した。中村氏はこの水準を、3万円の大台を前にした1つ目の大きな需給指標だったとみる。
日経平均は20年3月を底にほぼ一本調子で上昇していた。20年3月の安値(1万6552円)から同年6月の高値(2万3178円)の値幅は6626円。この値幅を6月の高値に上乗せすると2万9800円程度となる。20年3月の1万6500円程度は200日移動平均から25%程度下放れしていたことから逆方向に、足元で200日移動平均からの乖離(かいり)率が25%上方になると計算すると3万70円程度。こうしたテクニカル上の需給指標に次々と接近したことが上昇相場に拍車をかけたと中村氏はみる。
米国の10年物国債利回りが1.2%を上回ってくるなど、金利には再び上昇圧力がかかっているものの、現時点では景気回復に伴う金利上昇として株高の抑制には働いていない。「実質金利は低位で安定しており、バリュエーションにも割高感は生じていない」(大和の壁谷氏)。原油高も加わり、きょうの東京市場では鉱業や石油、銀行や証券など景気敏感株に買いが目立つ。
もっとも、日経平均は3万円を上回った後は急速に伸び悩み、午前終値は前週末比347円高の2万9867円だった。値上がり銘柄数5割強に比べ値下がり銘柄数も4割強と多い。目先の達成感に加え企業の決算発表は一巡し、ワクチンは今後、運用がうまくいくかどうかの段階に進む。「東証時価総額約700兆円の規模からして、長期移動平均の乖離が25%はさすがに高い。当面は上値を追う動きが一服してもおかしくない」(みずほ証の中村氏)との指摘があった。
〔日経QUICKニュース(NQN) 菊池亜矢〕