/

今週のFOMCでテーパリング「合図」も

16~17日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、緩和縮小についての議論が行われる証左が明示される可能性が出てきた。

ニューヨーク(NY)市場の注目は、3カ月ごとにFOMC声明文と同時に発表される米連邦準備理事会(FRB)経済予測だ。その中の「ドット・チャート」(FOMC参加者17人の金利予測)に重要な変化が生じる可能性がある。

結論からいえば、「2023年までゼロ金利継続」との見通しを変える参加者が増えることが考えられるのだ。

前回20年12月時点での「ドット・チャート」では、22年ゼロ金利継続予測が16人。利上げ1回予測が1人であった。

対して、今回は、ゼロ金利継続予測が数名減り、利上げ予測が数人増えるとの見通しが現実味を帯びている。

さらに、23年については、前回、ゼロ金利継続が12人、利上げ予測(含む複数回)が5人であった。

ここでは、利上げ予測者の数が、ゼロ金利継続予測者を上回るかもしれない。

ポイントは、ワクチン接種だ。

パウエル議長は「FRBにとってコロナ要因が最も重要」と述べてきた。

その新型コロナウイルス感染状況が前回20年12月時点では、最悪期を迎え、ワクチン接種も手探り状態であった。

しかるに、今回は、既に米国でのワクチン接種が、バイデン大統領の公約より早く1億回を突破した。

さらに、バイデン氏は、18歳以上のすべての人を5月1日までにワクチン接種の対象とするよう指示すると述べた。

米国経済の回復が早まれば、「長期失業者の雇用復帰」も、物価上昇のペースも早まる可能性がある。

12日に発表された2月の米生産者物価指数(PPI)は前年同月比で2.8%上昇と、18年以来の伸びを見せた。

同日発表の3月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値も、前月76.8から83.0へと、昨年3月以来の高水準となっている。

このようなマクロ経済好転下で、ドット・チャートに重要な変化が生じれば、FOMCで緩和縮小の議論が始まるのは当然の成り行きといえよう。FOMC後の記者会見でも質問が出るのは必至だ。後日発表されるFOMC議事要旨にも市場は重大な関心を向けるであろう。

気になるのは、市場の反応だ。

13年に起きた「テーパ―・タントラム」のごときショック症状の再来はあるのか。

筆者は、その可能性は低いと見る。

13年のバーナンキFRB議長「テーパリング」発言は、「青天の霹靂(へきれき)」であった。

しかるに、今回は、既に、市場内で十分に議論され、市場関係者も身構えている。

パウエル議長の「闇討ち」もあり得ない。「その場合(テーパリング)、十分な時間をとり、丁寧に説明してゆく」姿勢を強調してきた。

市場も「テーパリングリスク」を、ある程度は織り込みつつある。

長期金利急騰に対して株価が変動してきたのは、緩和継続による経済過熱の結果、緩和が縮小されるケースが想定されるからだ。

「テーパリングの呪縛」が過大視されているように思える。

むしろ「テーパリング」しないことによる経済過熱放置リスクが懸念される状況になっても不思議はなかろう。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

日経電子版マネー「豊島逸夫の金のつぶやき」でおなじみの筆者による日経マネームック最新刊です。

この書籍を購入する(ヘルプ):Amazon

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン