/

株、医薬品高でも拭えぬ不安 コロナとインフレに根強い警戒

8日午前の東京株式市場で日経平均株価は小幅に反落した。アルツハイマー型認知症治療薬候補の承認申請が米当局に認められたことをきっかけに、米バイオジェンと共同開発したエーザイに買いが集まり、医薬関連銘柄が物色の中心となった。それでも、日経平均を押し上げるだけの力はなかった。市場では内外に漂う不安が拭いきれていないようだ。

8日午前の東京株式市場の主役はエーザイだった。買い注文が殺到し、制限値幅の上限(ストップ高)水準の買い気配のまま午前の取引を終えた。買いは第一三共アステラス製薬など他の医薬株にも波及した。エーザイとアルツハイマー型認知症の診断法について共同開発するシスメックスは一時13%超上昇した。

業種別日経平均では医薬が2.72%高で午前の上昇率トップとなった。「エーザイに新しい材料が出たことをきっかけに、出遅れ感のあった医薬品株に物色の矛先が向かった」(国内運用会社の調査担当者)との見方があった。だが、日経平均は上昇の勢いが続かず下げに転じ、午前の終値は31円安の2万8987円だった。

上値の重さが目立つ中で注目されるのが、オプション価格から算出するボラティリティー・インデックス(変動性指数)の動きだ。「恐怖指数」の異名を持つ米国のVIXは7日時点で16.42。5月下旬以降は節目とされる20を下回っている。一方、日経平均オプションから算出する「日経平均VI」は5月13日の28.31をピークに低下してきたが、このところ20前後の横ばい圏にある。

「日経平均VIが下がらないのは、新型コロナウイルスの感染動向や今夏の東京五輪・パラリンピックを巡る不透明感が拭えないからだ」。りそなアセットマネジメントの黒瀬浩一運用戦略部チーフ・ストラテジストはこう指摘する。

東京や大阪など10都道府県を対象とする緊急事態宣言の解除期限は20日。感染力が高いとされる変異型ウイルスの感染が増えている。宣言解除で人の流れが増えれば、感染者数がすぐに増加に転じるとの指摘もある。東京五輪・パラリンピックの開催の可否はまだ見通せない。開催されれば、海外から多くの選手・関係者が来日する。ワクチン接種が進み経済活動の正常化への道筋が見え始めたにもかかわらず、状況が逆戻りするリスクへの警戒は残っている。

米金融政策をめぐる市場の動きも気がかりだ。10日には5月の米消費者物価指数(CPI)の発表を控える。米ダウ・ジョーンズ通信のまとめ(日本時間8日早朝時点)によると、市場予想は前年比4.7%上昇。4月(4.2%上昇)からインフレが加速するとみられている。食品とエネルギーを除く「コア指数」についても同様だ。

4月の米CPIが5月中旬に日経平均株価が3日間で2000円下げる一因となったのは、記憶に新しい。ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「市場はインフレ加速を織り込みつつも、発表後の反応が簡単には読み切れない」と話す。来週には米連邦公開市場委員会(FOMC)もあり、米国の量的金融緩和の行方をめぐって「転換点になる可能性もある」(井出氏)とみる。

リスク要因をひとつずつ乗り越えていけば、日経平均が3万円に向けた軌道を回復するという見方は根強い。だが、目の前に見えている不安要素を癒やしてくれるようなクスリはまだみつかっていない。

〔日経QUICKニュース(NQN) 三輪恭久〕

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン