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台湾TSMC、独り勝ち スマホ向け半導体で

受託生産最大手の台湾積体電路製造(TSMC)がスマートフォン(スマホ)向け半導体市場で独り勝ちしている。16日に発表した2014年4~6月期決算は売上高と利益が四半期ベースで過去最高となった。スマホの頭脳などになる高性能品で世界シェアは8割に達し、米アップルの新型スマホの受注も韓国サムスン電子から奪った。世界市場に高性能品を大量供給するスマホ時代の到来がTSMCに追い風となっている。

台湾南部の台南市にあるTSMCの新工場。6月からCPU(中央演算処理装置)などの製品出荷が本格化しており、トラックが忙しそうに出入りする。回路の線幅が20ナノ(ナノは10億分の1)メートルの最先端品を生産するこの工場は、「米アップルの製品を独占的に生産している」とささやかれる最新鋭の生産拠点だ。

アップルはこれまでiPhone(アイフォーン)用のCPUをサムスンに発注してきたが、今年発売する新モデルでは発注をTSMCに全面的に切り替えた。アップルは15年発売のスマホ向けCPUもすでにTSMCに発注したとされる。

TSMCの張忠謀董事長は6月下旬の株主総会で「下半期はすでに受注が満杯だ」と語った。だが、TSMCに生産を委託する台湾の聯発科技(メディアテック)の蔡明介董事長は「何とか増産してほしい」と悲鳴を上げる。米クアルコムや中国の展訊通信(スプレッドトラム)など他の半導体大手も「TSMC頼み」は変わらないようだ。

インテル上回る

米調査会社のICインサイツによると、世界の半導体受託生産でTSMCの市場シェアは13年に46.3%。スマホの薄型化や低消費電力につながる回路線幅28ナノメートルの高性能品に限れば、サムスンなど自社生産組を含めてもシェア8割を握るとされる。米インテルはパソコン用CPUで世界8割のシェアを握るがスマホ用は出遅れた。モバイル部門の利益は赤字が続いており、TSMCの後じんを拝している。

TSMCの受託加工賃は競合他社より10~15%高いとされるが、それでもなぜ仕事が殺到するのか。

競争力の源泉の一つは技術力だ。回路の微細化技術で先行し、来年には回路線幅が16ナノメートルの製品を量産する。「1日3交代、24時間体制で研究開発する」(張董事長)ことで16年に世界初の10ナノメートルの製品の量産をめざす。実現のため、TSMCは素材レベルから取引先と共同研究を重ねる。

 技術力の高さは歩留まりにも表れる。スマホ用の先端品の歩留まりは90%前後。70%前後とされる下位メーカーを引き離す。英アームなどの回路設計会社と提携し、「ライブラリー(図書館)」と呼ぶ約6300種類の回路情報や特許などの技術を顧客に提供できることも強みだ。

2つ目は生産能力の高さだ。スマホ向け半導体はパソコン向けより高性能で量も多い。TSMCの月産能力は主力の28ナノメートル品の場合、シリコンウエハー換算で約13万枚とされる。受託生産2位のグローバルファウンドリーズの3倍近い。12年以降は日本円換算で年間約8000億~1兆円と巨額の設備投資を続けており供給能力は圧倒的だ。

危うい拠点集中

3つ目は技術流出のない安心感だ。受託生産需要の高まりをにらみ、インテルやサムスンなど総合半導体メーカーも受託生産の強化に乗り出している。ただサムスンなどはスマホなどの製品部門を持つため、「技術流出などを心配する顧客が多い」(台湾・工業技術研究院の産業経済趨勢研究センター=IEKの陳婉儀アナリスト)。

TSMCに弱みがあるとすれば、生産拠点の過度の集中だ。技術力を維持し、効率性を高めるため、生産能力の9割超は台湾に置く。張董事長は「工場がある3地域はそれぞれ100キロメートル以上離れている」とした上で、「1999年の大地震の際も工場は5日間止まっただけ」と強調する。

ただ現在のようにスマホ用の需給が逼迫するなかでは、生産が数日停止しただけでもサプライチェーン(供給網)には打撃だ。TSMCの技術力と生産能力はスマホの世界的な普及を後押ししたが、競合他社が束になっても代替しきれないほど巨大な存在になった今、スマホ業界にとってTSMC依存がリスクにもなる可能性を秘めている。

 台北=山下和成

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