2019年2月18日(月)

埼玉の「三富新田」、世界農業遺産めざす 三芳町が推進協

2014/7/10付
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埼玉県三芳町は「三富(さんとめ)新田」の世界農業遺産への登録を目指す。このほど町や農業団体などでつくる協議会を発足。来夏の認定に向けて準備を始める。落ち葉から堆肥を作る循環型農法を江戸時代から続け、大都市周辺にありながら農地を守ってきた。認定を受けることで伝統農法の重要性を知ってもらい、地域資源として保全につなげる考えだ。

三富新田世界農業遺産推進協議会が発足した同地域は、1700年ごろに川越藩主の柳沢吉保が開発を進めた。現在の三芳町上富と所沢市の中富、下富にまたがる約1400ヘクタールの土地を指す。農家1軒当たりの区画が細長いのが特徴で、幅約70メートル、長さ680メートルの区画が並ぶ。

区画はそれぞれ、住居がある「屋敷地」とサツマイモなどを育てる「耕地」、ナラやアカマツなどの「雑木林」の3つで構成される。屋敷地のまわりにはケヤキやヒノキなどを植え防風林や生活用の木材として利用。雑木林の木は燃料用のまきとして使われるほか、落ち葉を堆肥として活用する仕組みだ。栄養分が少なく水はけの悪い関東ローム層の赤土で農作物を育てるための知恵といえる。

世界農業遺産は国連食糧農業機関(FAO)が伝統的な農業や生物多様性の保全を目的に認定している。月内に三芳町が農林水産省へ申請書を提出。9月から10月にかけて農水省が国内選考を実施する。国内審査を通れば、来年夏ごろのFAOの国際会議で認定の是非が決まる。農水省によると既に複数の地域が名乗りを挙げているという。三芳町は「地元の野菜の消費拡大や、伝統農法と生態系の多様性の保存に努めたい」としている。

世界農業遺産に認定されても、財政面などの直接的な支援などはなく、地域イメージや知名度の向上といった副次的な効果が大きい。

2011年6月、日本で初めて世界農業遺産に認定された場所の一つである石川県の能登地域は、ため池が点在し、棚田が広がる風景などが評価された。石川県里山振興室は「地元の人たちが里山里海を守ろうという意識が高まった」と指摘する。

能登では地元農協を中心に「能登棚田米」など農産物のブランド化の動きが進んでいる。また、能登町で農家が観光客を受け入れている「春蘭の里」と呼ぶ集落では、認定前は数軒だった民宿が現在では40軒を超え、年間約8000人が訪れている。

▼世界農業遺産 国連食糧農業機関(FAO)が2002年に始めた。生物の多様性を維持できる農地の利用法や、農村文化・景観の保全を狙っている。国内では石川県の能登半島のほか、新潟県の佐渡島、静岡県の茶草場、熊本県の阿蘇の草原、大分県の国東半島の5カ所が認定されている。いずれも地方で、三芳町のような大都市近郊が目指すのは珍しい。

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