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米大手小売り、メーカー巻き込み化学物質抑制へ

日本総合研究所理事 足達 英一郎

企業にとって取引先や消費者から環境対策の巧拙を問われるのは少なからずインパクトがある。世界最大のスーパーマーケットチェーンである米ウォルマート・ストアーズ。「毎日が低価格」というキャッチフレーズを掲げてきた同社でさえ、近年「自らの規模の大きさを利用して世界をより住みやすい場所へと変えていく」と宣言している。

代替物質への切り替えを要請

「化学物質の持続可能性プログラム」で参照される政府規制(一部抜粋)
米  国生物濃縮性で有毒な難分解性
化学物質優先リスト
国家廃棄物最小化プログラム、
米国国家毒性プログラム
欧州連合内分泌撹乱化学物質優先リスト
化学物質の登録、評価、認可お
よび制限に関する規則
国連環境
計画
残留性有機汚染物質に関する
ストックホルム条約

昨年9月には「化学物質の持続可能性プログラム」を発表。米国店舗での取り組みに、いま多くの企業の目が集まっている。「環境を持続可能にする商品を仕入れ、品ぞろえを変えていく」という方針の一環だ。政府の規制や検証結果をもとに、同社が安全性が懸念される化学物質を指定。商品を製造するメーカーに使用の廃止や代替物質への切り替えを働きかける。

今年1月から進捗管理を始め、2016年1月には最初の進捗状況を報告する。あわせて同社で販売する商品の原料をメーカー各社がウェブサイト上で公開(15年1月めど)、優先的に削減する10物質の使用を続ける場合は商品の容器包装に使用原料を明記する(18年1月めど)を要請している。ヘルス&ビューティー、家庭用紙製品、ペット用品、家庭用薬剤、化粧品、幼児用製品が対象だ。

こうした取り組みの背景には「毎日が低価格」というコンセプトを掲げるゆえに、環境保全やサプライヤーの労働安全衛生への配慮が足りないという、米国の消費者団体や非政府組織(NGO)の厳しい問題提起があった。これに応えるかたちで先行したのが温暖化ガス排出削減だ。

店舗の省エネにとどまらず、仕入れ先との関係を通じて、製品のライフサイクル全体を通じた排出削減を追求すると決断。10年2月に「サプライチェーンから生じる二酸化炭素(CO2)排出量を15年までに2000万炭素トン削減する」と発表した。現時点で300万炭素トンの削減を達成。15年までには750万炭素トンの削減が達成される見通しだ。

情報開示姿勢の後退を問題視

高い目標を課すことで、仕入れ先の理解も必要な製品のライフサイクル全体を通じた環境負荷の低減を強力に推進するもくろみだ。日本の食品や日用品メーカーの関係者も「ウォルマートからのプレッシャーは無視できない」と話す。

一方で今回の「化学物質の持続可能性プログラム」には議論が続いている事項もある。例えば「優先的に削減をすすめる10物質」は一般には非公開とされた。ウォルマートは「サプライヤーに過度な負担をかけないため」と説明する。

だが今年5月、化学物質削減の運動を進めるNGOが「サプライヤーとの間で秘密保持契約まで結んで10物質の名前を明らかにしないのは、消費者の知る権利を侵害している」とかみ付いた。昨年9月の構想発表時に比べて、開示姿勢の後退が問題視されているのだ。

方針変更の背景には、取引先のメーカー側からの抵抗があったことは容易に推測される。ただ、川下から川上への化学物質使用削減の要請という大きな流れは拡大していくだろう。今年は合成化学物質の拡散に警鐘を鳴らしたレイチェル・カーソン女史の没後50年にあたる。米国社会は確実に変化を遂げているようにも見える。

[日経産業新聞2014年7月4日付]

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