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LINEがコロンブス作戦 スペイン語経由で米攻略

無料通話・チャットアプリのLINE(東京・渋谷)。海外での登録者数は日本の5100万人を大幅に上回る3億8000万人に達した。立ちはだかるのは米フェイスブックが買収したワッツアップ。LINEが仕掛けるのは「コロンブス作戦」とも呼べそうなスペイン語圏経由で米国を攻める独自の手法。日韓発のアプリは米国の巨人を倒せるのか。

メッシ選手起用

「ゴール」と叫ぶレアル・マドリードのクリスティアーノ・ロナウド、軽快にドリブルするバルセロナのメッシ――。スペインを代表するサッカークラブのスター選手のイラストが現地のスマートフォン(スマホ)で盛んにやり取りされている。LINEは2013年9月、両クラブと業務提携して人気機能の「スタンプ」に選手の似顔絵を利用する権利を得た。

スタンプはチャットで喜怒哀楽の感情を表すイラストだ。イラストに添えられる「OK」「Hello」といった言葉は、スペイン語やポルトガル語などで表記される。「ビッグクラブの人気を借りて欧州と南米でユーザーを獲得する」(LINE)のが狙いだ。

チャットができる「メッセンジャー」と呼ばれるアプリはLINEだけではない。欧米ではフェイスブックが今年2月に190億ドル(約1兆9000億円)で買収を発表したワッツアップが広く普及している。交流サイト(SNS)の利用実態を示す月間アクティブユーザー数(MAU)は5億人。LINEは公表していないが3億人程度とみられ、水をあけられている。

ワッツアップはスペインでも利用者が多いが、12年秋にトラブルで一時停止。現地の有力ブロガーがLINEを勧めたことから、一部で乗り換えが起こった。LINEは当時、日本語と英語のみだったが、敵失を見逃さず、すかさずスペイン語版を投入した。

 スペインは、中南米そして北米につながる門だ。「初速が出てきたら大規模なプロモーションをかけるのがパターン」(出沢剛・最高執行責任者=COO)。13年からスペインでテレビCMを放映。プライベートでの交際が噂される男女のタレントがスタンプを送り合う内容で話題をさらった。瞬く間にスペインでの人気は広がり、欧州で最大の1800万人以上の利用者を獲得した。

さらに今年2月には現地の通信大手のテレフォニカと提携した。テレフォニカがスペイン、ベネズエラ、ペルー、コロンビア、ウルグアイ、ブラジル、メキシコで販売するスマホにLINEを標準搭載することに成功。中南米で利用者を獲得する下地をつくった。

キャラ筋肉質に

プロモーションと並ぶ世界戦略のカギが、マーケティングに基づく現地化だ。LINE躍進の立役者となったスタンプ。月を擬人化した「ムーン」というキャラクターは丸みを帯びたイラストが特徴だが、ブラジルでは筋肉質に変貌する。現地調査で屈強な男性が好まれる傾向が分かり、柔らかいデザインでは受けが悪いと判断した。出沢COOは「翻訳は当然として、文化に根差した改善を加える」と話す。

次の狙いは米国本土だ。LINEはインターネットに接続していれば国を超えてチャットや通話機能が使える。中南米のスペイン語圏を足がかりに、米国に住むヒスパニック(中南米)系に入り込む機会をうかがう。10年には全米で中南米系住民は5千万人を突破し、増加し続けている。

 「Descarga LINE GRATIS ahora(LINEを今すぐ無料ダウンロードしよう)」。LINEは今春、米国のスペイン語放送局「テレムンド」でCMを流した。ヒスパニック系の男女がスペイン語で通話する内容だ。

LINEはアプリ同士の無料通話だけでなく、LINEが入っていない携帯電話や固定電話にも割安な料金で通話できる。ワッツアップにはない通話機能に焦点を当て、LINEの利便性を訴えた。

アップルのコンテンツ配信サービス「アップストア」でのLINEのダウンロード数は米国で3月中旬まで200位台だったが、CM放映後は50位以内に上昇した。

米国攻略の糸口をつかんだものの、順調に利用者を増やせるかは未知数だ。メッセンジャーアプリは1度使い始めると、同じものを使い続ける傾向がある。既にワッツアップが普及する米国市場を切り崩すのは簡単ではない。フェイスブックによるワッツアップの買収で、体制はさらに盤石になった。

プロモーション頼みの普及策には限界があり、LINEが自ら「発明」と呼ぶスタンプも、米国では子供っぽいと敬遠される向きがある。「早期に5億人の利用者を」という森川亮社長にとって米攻略は必達目標だ。ジャイアント・キリング(番狂わせ)を起こせるか。太平洋ではなく、大西洋を渡る「コロンブス作戦」の成否が問われそうだ。

(村松洋兵)

[日経産業新聞2014年5月22日付]

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