2017年11月25日(土)

エンジンで欧州超えへ結束 車8社、ディーゼル共同研究

2014/5/20 0:57
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 トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車など国内乗用車8社は19日、次世代エンジンの共同研究に乗り出すと発表した。「自動車用内燃機関技術研究組合(AICE=アイス)」を設立。国内の大学とも連携し、エンジンの燃費性能を大幅に向上させる基礎技術を開発する。激しい販売競争でしのぎを削るライバル8社。異例の大同団結に踏み切る真意は何か。

 「産学官の英知を結集して内燃機関の基盤技術を強化する」。19日の記者会見で、AICE理事長に就いた本田技術研究所の大津啓司常務執行役員はこう強調した。会見にはトヨタの嵯峨宏英専務役員や、日産の平井俊弘常務執行役員など全8社の役員が参加。気合のほどを示す顔ぶれとなった。

 研究テーマはエンジン性能の向上だ。2020年までにディーゼルエンジンの二酸化炭素(CO2)排出量を10年比で3割減らす技術を開発するほか、ガソリンエンジンの燃焼技術向上にも取り込む。ガソリンエンジンで現在39%、ディーゼルで同42%程度の熱効率を20年までに5割に高めるのが最終的な目標だ。

 ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の投入が増える中、なぜエンジンなのか。背景には強い危機感がある。

 次世代エコカーの開発で先行する日本車だが、ガソリンエンジンより燃費性能が良いとされるディーゼルエンジンは苦手の分野。特に2台に1台はディーゼル車といわれる欧州で「日本車のシェアは5%程度」(AICE運営委員会の松浦浩海委員長=本田技術研究所主任研究員)と、大きく出遅れた分野だった。

 今後の主戦場となる新興国でもエンジン技術は重要だ。実際、20年時点でも世界で生産される車の8~9割はエンジン車との予測が多い。多種多様なエコカー開発に研究人員を取られるなか、基礎研究の部分は「小異を捨てて大同についた方がよい」との判断がある。

 異例の結集の理由はそれだけではない。エンジン開発を巡る人材の先細りへの懸念だ。

 「エンジン開発に配属される新人のうち、大学で関連分野を専攻したのは3分の1以下」(トヨタ)。「昔は黙ってもエンジン開発に人が来たが、最近ではロボットや航空機の希望者が多い」(ホンダ)――。各社のエンジン開発の現場からはこんな声が聞かれる。

 大学でのエンジン研究室や講座も、環境やエネルギーなど目新しい看板に取って代わられてきた。次代の人材育成のためにも国を挙げてエンジン開発に取り組むべきだとの声は多い。

 実際、今回の枠組みは「オールジャパン」そのもの。初年度予算の約10億円のうち、一部は経済産業省の補助金を使う。研究には東京大学や京都大学、早稲田大学など各大学も協力。自動車各社が大学の研究室に技術者を派遣し、研究を進める。「自動車メーカーにとっては研究開発費が削減でき、大学などにとっては企業ニーズを生かした研究や人材育成の強化につながる」(松浦氏)

 こうした動きは欧州で先行する。1950年代にはドイツでエンジンの産学協同の研究組合が発足し、今ではフォルクスワーゲンをはじめ約150社が参加する。メーカーの開発担当者が大学教員になるなど産学の人材交流も盛んだ。主要各社のエンジン設計に携わる大学発の有力ベンチャー企業まで生まれている。

 一方、日本では各社が基礎研究から独自に手掛けるケースがほとんど。「課題の『山越え』に例えると、日本はそれぞれが専用道路を造って乗り越えるが、欧州勢は役割分担を明確にして1つのトンネルを掘って抜ける」(松浦氏)という。日産の志賀俊之副会長も「協調と競争のバランスをうまく取り、日本の自動車産業の力を底上げする必要がある」と話す。

 共同研究費は初年度10億円弱で、年間数千億円規模の完成車メーカーの研究開発費に比べると微々たる規模だ。それでも大津氏は「産官学連携のAICEにより、開発効率で欧州勢に負けないようにする」と意気込む。

 「AICEをきっかけにエンジン以外の分野でも連携が進む可能性もある」(経産省関係者)。協調と競争のバランスをどう取るか。成果が出にくいとされる「日の丸研究」の成否が試される。

(田中暁人、賀川雅人、浅沼直樹)

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