津波で犠牲、遺族「人災だ」 大川小訴訟で初弁論 - 日本経済新聞
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津波で犠牲、遺族「人災だ」 大川小訴訟で初弁論

仙台地裁、市や県は争う姿勢

東日本大震災の津波で死亡、行方不明となった宮城県石巻市立大川小の児童のうち23人の遺族が、多くの犠牲者を出したのは学校側が安全配慮義務を果たさなかったためだとして、市と県に計23億円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が19日、仙台地裁(高宮健二裁判長)で開かれた。遺族は「まさに人災だ」「守れた命だった」と意見陳述した。

市は、津波の予見はできず、過失はなかったとして争う姿勢を示し、県も請求棄却を求めた。

遺族は4家族7人が意見陳述。6年の長男、鈴木堅登君(当時12)が亡くなり、4年の長女、巴那ちゃん(当時9)が行方不明の父、義明さん(52)は「先生の言うことを聞いていた子供たちが哀れで心が痛む。判断の遅れで取り返しのつかないことになった。まさに人災だ」と述べた。

只野英昭さん(43)は5年だった長男(14)が津波にのまれながら奇跡的に助かったが、3年の長女、未捺ちゃん(当時9)を失った。「子供たちは1メートル高い場所にも逃げさせてもらえなかった」と訴えた。

遺族側は、大津波警報で学校側は危険性を予見できたと指摘。情報収集義務を怠り、児童を校舎の裏山など高台に避難させず、約45分間校庭に待機させ続けた責任があるとした。弁論で、来年3月11日に現場検証することや、津波にのまれた教職員の中で唯一助かった男性教諭の証人尋問を求める準備書面を出した。

これに対し市は、ハザードマップで大川小は津波浸水区域になかったと指摘。周辺地区で住民多数が犠牲になったことも挙げ「津波を予見できなかったのはやむを得ない」とした。裏山に、児童を安全に避難させる経路はなかったとも主張。校庭での待機時間は「余震の中、児童に寄り添い、落ち着かせようとしているうちに過ぎたと想像される」とし、教職員に安全配慮義務違反などの過失はなかったとした。

▼大川小学校 東日本大震災の津波で児童74人が犠牲になったほか、教職員も在籍していた13人のうち10人が死亡した。校庭から避難中に助かったのは、児童4人と教職員1人だけだった。第三者の検証委員会は今年3月、「避難開始の意思決定が遅く、避難先を河川堤防付近としたことが事故の直接的要因」とする最終報告書を、宮城県石巻市に提出した。大川小は現在、石巻市内の仮設校舎に移っている。被災した校舎を保存するかどうかは決まっていない。

〔共同〕

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