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鈍牛返上?ドコモ 「バックエンド」に500億円投資

NTTドコモ、ソフトバンク、KDDIの大手3社がすべて米アップルのiPhone(アイフォーン)を扱い「端末」は競争軸ではなくなった。「通信エリアやスピードで差をつける」と各社が競ったインフラ競争もほぼ平準化した。次の競争軸はサービスの多様化に移る。その戦いを下支えするのが「バックエンド」(顧客管理システム)だ。

当初はためらい

「無事に動いているのだから、今のままでいいだろう」――。2004年に就任したNTTドコモの中村維夫元社長は、顧客管理システム「アラジン」刷新の必要性を訴える技術陣に、最初はこう答えたという。

大規模システムの全面刷新には膨大な費用と年月がかかる。ドコモはアラジン刷新に投じた費用を公表していないが、推定で400億~500億円を投じたもよう。期間も3年がかりだった。

経営陣がためらうのも無理からぬところ。だが、携帯電話会社のシステム事情に詳しいIT企業の幹部はこう指摘する。「新たな料金プランの投入などで顧客サービスを強化するには料金管理や契約管理などの基幹システムを全面的に見直さなければならないと、各社はずっと前から分かっていたはず。だが、なかなか踏み切れなかった」。

理由は内部にあった。一口に「ドコモのネットワーク」というが、携帯電話の基地局や中継網のような通信スピードや人口カバーに関わる「通信設備」と、料金や契約、利用状況を管理する「バックエンド」に分かれる。

ドコモなど携帯電話各社が先行して重視してきたのが前者の「通信設備」。2000年初頭にインフラ整備が始まった3G(第3世代携帯)、その10年後に3Gを塗り替え始めたLTE。通信設備の増強が後手に回ると、すぐさまシステム障害に見舞われる。

「消費者の不満がまっ先に向かうのは通信スピードやカバー範囲」(同幹部)だ。限られた設備投資は、通信設備の増強に充てられ、「バックエンド」は後回しにされた。

端末の勝負一服

だが「iPhone」や「LTE」での勝負は一服。次の競争軸はどこなのか。

A・T・カーニーの吉川尚宏パートナーは「携帯電話会社にとっての最大の課題は解約率を下げること。光回線や電気、ガスなどとバンドルすれば解約率を下げられ利益水準を高められる」と指摘する。野村総合研究所(NRI)の阿波村聡上級コンサルタントも、「今後の競争軸として携帯以外のサービスと組み合わせた新たな割引が有効」との見方だ。

実際、携帯電話会社は金融など生活サービス事業にも乗り出している。だが「外部サービスを柔軟に組み合わせ、競合に先駆けて新たな料金サービスを投入できるかどうかは、料金管理などのシステムの優劣に左右される」(吉川氏)。サービスの多様化が進めば進むほど、設備の付加価値は通信設備からバックエンドに移る。

「情報システムが経営スピードを阻害する現状を放置すれば会社の将来はありません」。NTTドコモCIO(最高情報責任者)の西川清二常務執行役員は中村社長(当時)にこう訴え、「アラジン」の刷新は決まった。消費者が求めるサービスの将来形を見極め、先手を打って大規模設備投資を打つ胆力が携帯電話会社に求められている。

NTTドコモの過去のシステム障害
2011年6月通信設備の故障で関東甲信越地方の契約者172万人が通話・通信しにくくなる
9月台風で通信ケーブルなどが破損、一部地域でサービスが停止
12月通信伝送路の故障によって、「spモード」のメールアドレスが他人のものに置き換わるトラブルが発生
2012年1月東京都内の新型交換機が故障、最大252万人が通話・通信しにくくなる
7月spモードの制御システムでソフト更新ミスがあり、他人のメールアドレスなどが参照できる状態に
11月spモードを監視するサーバーの設定ミスで、最大270万人が電子メールなどを利用しにくくなる

「店舗の営業止めるな」



 プログラム行数が2370万行に及んだ初代アラジンには1000ページを超える「契約約款」の内容が盛り込まれている。「約款の内容をすべて理解している社員は皆無」(ドコモの西川清二常務執行役員)。つまりアラジンだけが全てを知る状態だった。
 ベテラン社員などの力を借りて過去のサービス追加や変更の経緯をたどり、2370万行のプログラムが「なぜそう書かれたか」を丹念に洗い出した。2代目アラジンの完成後にも試練が待っていた。
 「ドコモショップの営業は止めるなよ」。当時の山田隆持社長はこう厳命。銀行など大規模システムの切り替えは年末年始やゴールデンウイークを使うが、ドコモショップは365日営業する。
 新旧システムの並行稼働期間を設け、全国の店舗が段階的に新システムにつなぎ替えられるようにした。店舗のパソコンからは初代と2代目両方のアラジンにアクセスできるようにしておく。その上で、初代が店舗からデータを受け付けると、その内容を2代目にも同時に反映させる。これにより2代目アラジンを常に最新の状態に保ち、移行を完遂した。

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