ダイキン、脱カリスマ経営手探り 井上氏のCEO退任発表

2014/5/9付
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ダイキン工業は8日、井上礼之会長兼最高経営責任者(CEO、79)が6月27日付でCEOから退き、十河政則社長(65)がCEOに就くと発表した。井上氏は退任後も取締役と会長を継続するほか、新設する「グローバルグループ代表」に就任。買収した海外企業との連携や後継者育成に尽力する。ダイキンを空調世界最大手に導いた「カリスマ」依存の経営脱却へ軟着陸できるか。

「急ピッチで海外展開を進めてきて、コーポレートガバナンスを本格的に構築する時期にきた」。井上会長は8日の記者会見で、今回の人事の狙いをこう説明した。

井上氏は1994年6月にダイキン社長に就任後、海外展開を本格化。12年には米グッドマン・グローバルを買収し空調世界最大手の称号も手にした。2014年3月期の決算でも過去最高益を達成。はた目には絶好調に見えるが内実は違う。「世界で戦える体制になっていない」。井上氏は自戒を込めて話す。

例えばインド市場。タイ工場から空調機器の供給を続け、現地化の判断が遅れた。その後インド工場を建設したが、ライバルの韓国勢の先行を許したまま。世界各地の市場動向にアンテナを張り巡らせ、機敏に戦略を練る体制の構築は道半ばだ。

無理もない。10年前と比べると「戦線拡大」ぶりは一目瞭然だ。今や売上高の7割超は海外。連結社員数は5万6200人と3.3倍に増え、その8割が海外企業で働く。現地企業との連携が不十分で「ダイキン本体の意思決定が遅れ、機会損失を被った地域もある」と井上氏は指摘する。

そこで考えたのが、十河社長との役割分担だ。「経営の全ての責任と権限はCEO(の十河氏)が持つ」。井上氏はグローバルグループ代表として、海外有力企業との連携強化を担う格好だ。

世界に根ざした経営を貫くには、マーケティングや商品開発など現地に権限を委譲することが必要。ただ単に任せれば良いわけではない。

「最近はどの部門もあれ買いましょう、これ買いましょうと言う」。ある幹部はこぼす。好業績を背景に各事業部や各地域の要求は膨れがち。何をどこまで任せるかを線引きしたうえで、本社は製品開発や品質向上などマザー機能を強化する。

現地からの情報収集の仕組みも見直す。「泥水の情報が真水になって本社に入ってきたのでは経営はできない」(井上氏)。途中でゆがめず、現地の生の情報を素早く共有する。その仕組み作りを井上氏が指揮する。

井上氏は人事・総務畑の出身。「人が基軸の経営」を標榜するダイキンで労務対策や人材育成を支えてきた。人の話をよく聞く一方、ユーモアを交えたサービス精神が人望を集めてきた。

その井上氏も社長就任から20年。年齢も79歳だ。CEO退任のタイミングを伺っていた井上氏には最高益も節目だったはず。だが取締役に残り、新たな役割に就いた理由は周囲の慰留だけではないだろう。真の世界企業への脱皮と後継者の育成は自らの責務と考えたに違いない。

「今の社長、副社長の次の世代の育成をやりたい」。カリスマに頼らず持続成長できる経営へ。ダイキンはその一歩を踏み出したばかりだ。(早川麗、城戸孝明)

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