2019年2月18日(月)

ドイツ発、考える工場 シーメンス・ダイムラーなど連合

2014/4/15付
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シーメンスやダイムラー、ボッシュなど、ドイツを代表する企業が連合し、ものづくりを根底から変えようとしている。劇的な生産性向上と省エネルギーを実現し、猛追する新興国を引き離して、生産拠点としての強さを固める――。ものづくり大国ドイツが威信をかける「第4の産業革命」は、11兆円超の経済効果も期待される。

4月上旬。独北部ハノーバーで開かれた世界最大級の産業見本市「ハノーバー・メッセ」。重電大手シーメンスが展示した次世代の自動車生産ラインに人だかりができていた。

ラインに車体が流れ、ロボットが加工する。見た目はどの自動車工場にもある組み立てライン。だが、ものづくりの発想が全く違う。車体とロボットが「会話」しながら組み立てていくのだ。

仕組みはこうだ。車体にはICタグが埋め込まれ、型式や必要部品、組み立て手順などの情報が記録してある。車体はロボットに近づくと「5枚のドアが必要です」などと作業を指示。ロボットは指示を聞いて動く。

従来の工場は人がロボットに作業手順を覚え込ませる。ロボットはその通り動くだけなので、手違いでラインに違う車体が流れてきた場合、作業ミスを起こす可能性がある。だが、ロボットと車体に「会話」があればその心配は無用だ。データを突き合わせ、間違いなく作業できるからだ。

品質と低コストの両立には大量生産が必要というのが従来の常識。だが、このシステムが実用化されれば多品種少量の製品を量産品並みのコストでつくる道が開ける。

モノ同士がつながり、会話する――。シーメンスの展示はドイツが製造業の高度化をめざし、国を挙げて推進する「インダストリー4.0」を具現化したものだ。

将来的な目標は極めて野心的だ。ドイツ中にある生産設備、製品、部品、素材のひとつひとつにIDを割り当ててインターネットでつなぎ、ドイツ国内を「ひとつの仮想工場」に見立てることで、資源の全体最適を実現しようというのだ。ネットを使って電力需給を最適化する「スマートグリッド」(次世代送電網)の工場版といえる。

こうした「スマート工場」の構想が実現すれば、フル生産の工場が稼働率の低い他の工場を活用できる。ある工場で在庫の山となっている部品を、そうとは知らず増産してしまうこともなくなる。1企業だけでなく社会全体の生産性が高まり、エネルギー消費も減る。

働く人はどうなるか。自動化がさらに進むことで、工場の単純労働や工程を制御する仕事は減る見通しだ。一方でIT(情報技術)を駆使した複雑な生産システムの構築など、付加価値を生む創造的な仕事のできる人が一層求められる。

シーメンスも機器製造からITに経営のカジを切る。ジーグフリート・ルスヴルム取締役は語る。「当社がソフトウエアの会社に変わったって?そうだとも」

ボッシュの産業機器子会社ボッシュ・レックスロスはネットで工場の外部とつながる次世代ファクトリーオートメーション(FA)を提案。カール・トラグル社長は「市場は世界に広がる」と輸出にも意欲を見せる。

統合基幹業務システム(ERP)世界最大手のSAPは「4.0」で生まれる膨大なデータ処理とセキュリティー対策に商機をみる。産業機械部門トップのゲオルク・クーベ氏は「世界で最もダイナミックな先端工場の動きがドイツで起きている」と興奮気味に語る。

独フラウンホーファー研究機構などは2025年までに国内で少なくとも787億7千万ユーロ(約11兆1千億円)の経済効果があると試算する。

課題もある。通信規格やものづくりの仕様などの標準化が必要になる。工場がネット外部とつながることでサイバー攻撃にさらされるリスクも高まる。普及には息の長い取り組みが必要になるが、ドイツ企業は手堅く目標に向かっている。

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