社員の「うつ」、血液で見抜く 早期発見へ

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2014/4/13 7:00
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今も精神科の受診に拒否反応を示す人はいる。血液検査でうつ病の可能性が分かるようになれば、内科医でも早期に診断でき、精神科を紹介できるほか、患者自身も自分の状況を正確に把握できるようになる。

効果が数値で分かるため、抗うつ薬を適切に利用でき、治療期間を短くする効果も期待できる。「EAPでうつ病診療は変わる」と川村氏。HMTでは今年度よりEAPを試行する医療機関数を増やし、19年をめどに保険収載を目指す。

■近赤外線で識別

うつ病を客観的に把握しようという試みはEAPだけではない。「光トポグラフィー」と呼ばれる手法もある。センサーのついた帽子のようなものを頭でかぶった状態で「あ」から始まる言葉を一定時間挙げてもらう。同時に近赤外線を頭皮にあてて脳内の血流の変化を読み取る。そうすると、うつ病や統合失調症などと、ほかの精神疾患とを識別することができるのが特徴だ。

これまで大学病院を中心に全国26施設で先進医療として行われてきた光トポグラフィーだが、今年4月からは保険収載されて保険診療として認められるようになり、さらなる普及が期待される。

「うつ病の治療薬は統合失調症や双極性障害では使ってはいけない。薬物以外の治療法も異なるため、光トポグラフィーの持つ意味は大きい」と東京大学精神医学の笠井清登教授は話す。

例えば「うつ病だけれど薬の効果がない」として紹介された患者に光トポグラフィーを行うと、統合失調症を疑われる例も少なくないという。「統合失調症を疑わなければ、患者から聞き取れない話もある」と笠井教授。経験豊富な精神科医にとっても、診断の右腕になりつつある。

■患者95万人、社内の競争激化

厚生労働省によると、2011年のうつ病の患者数は95万8000人。1996年には43万3000人で、統計上でみても患者は急速に増えている。

もっとも、国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター長で、日本うつ病学会理事も務める大野裕氏は「統計上、うつが増えているからといって、うつ病の患者数がそれだけ伸びていると考えるのは早計」と指摘する。

1999年、日本でSSRIと呼ばれる現在主流の抗うつ薬が発売され、広告も出されてうつ病に注目が集まった。それによって、うつ病という言葉が社会で一般化し、これまで精神科の受診をためらっていた人たちが受診するようになったためだ。

ただし、大野氏も企業を中心としてうつ病患者が増えている印象を持っているという。「地域でも企業でも人間間の関係性が希薄になっている。特に企業では余剰人員を抱えなくなり、社内での競争激化がうつ病につながっているようだ」(大野氏)

現在国会では、企業にメンタルヘルス対策を求める労働安全衛生法の改正案が審議されている。これまで以上に企業には社員のメンタルヘルスケアに対応することが求められている。

[日経産業新聞 2014年4月10日付]

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