2019年6月19日(水)

エコ重視の東京五輪、施設完成までに3つの課題
日本総合研究所理事 足達英一郎

2014/4/12 7:00
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東京都は3月27日、2回目の2020年東京オリンピック・パラリンピック環境アセスメント評価委員会を開催した。この会議で、実施段階環境影響評価調査計画書の議論が始まったと伝えられている。

■31施設が環境影響評価の対象に

新設される恒久施設一覧
○オリンピックスタジアム
○有明アリーナ
○大井ホッケー競技場
○海の森水上競技場
○若洲オリンピックマリーナ
○葛西臨海公園
○夢の島ユース・プラザ・アリーナA
○夢の島ユース・プラザ・アリーナB
○夢の島公園
○オリンピックアクアティックセンター
○武蔵野の森総合スポーツ施設
○選手村

(出所)東京都

今回の招致で都は「環境を優先する2020年東京大会」をアピールしてきた。立候補にあたって既に、大会の開催に必要な全ての会場及びそれらを結ぶ交通輸送などの関連基盤についての初期段階環境影響評価は実施している。

今後、法や条例で必要となる環境アセスメントと並行して、国際オリンピック委員会の要求に基づき、自主アセスメントの位置づけで、より詳細な実施段階環境影響評価が実施される。今回はこの議論が始まったというわけだ。あわせて、2020年東京オリンピック・パラリンピック環境アセスメント指針や実施段階環境影響評価調査計画書も公表された。

競技会場となる全37施設のうち、選手村から8キロ圏内にあるメーンスタジアムや競技場など29施設と、圏外の「武蔵野の森総合スポーツ施設」「武蔵野の森クラスター」の計31施設が実施段階環境影響評価の対象となった。恒久利用する12施設の新たな建設スケジュールも示されている。

注目は「環境」項目のほか施設の耐震性、周辺の交通量や交通流の変化を評価する「社会経済」項目を追加した点だ。さらに(1)地域スポーツ団体やスポーツ参加者の増減(2)ボランティア活動の内容とその程度(3)地域コミュニティーの形成とその活動(4)都民等の環境への関心(5)経済波及効果なども評価するという。

ただし、テストイベントが開催される19年度の施設完成までに課題は多い。第一は「多くのステークホルダーとの協調・協議を特に重視する」とした約束をどう実践するかだ。例えば、葛西臨海公園については豊かな自然環境を破壊するカヌー競技場建設計画の見直しを求める運動が続いている。実際、初期段階環境影響評価でも「周辺の生物の生育・生息環境の連続性」の項目で「開催中や開催後に施設の存在や後利用により生物の生育・生息場所の一部に消失・分断が生じ、ミティゲーションは実施するものの、マイナス評価が残る」とされた。それでも今回の実施段階の調査計画書に特段の配慮は認められない。

■試される組織委員会の本気度

第二は「社会性(特に労働基準等)に配慮する」という視点が、いまの「社会経済」項目の影響評価で、十分に反映できるのかという点だ。政府は外国人技能実習制度を建設業には拡充し、受け入れ期間を最長5年間にするほか、実習を終えて帰国した人に最長3年間の再入国を認める緊急措置を決めた。15~20年度の6年間で、のべ7万人程度の外国人の受け入れを見込むという。こうした変化が社会に与える影響こそ事前にきちんと評価しておくことが重要だろう。

第三には施設等ハードの環境配慮は、こうしたアセスメントで確保されるとしても、大会運営等のソフト面での環境配慮や人々の環境意識の啓発をどのように進めていくのか、その道筋がまだ見えないことである。立候補時に招致委員会は「持続可能なロンドン2012年委員会の大会報告を、詳細に研究する」としていたが、例えばロンドン大会では観衆にペットボトル飲料の利用をやめ、無料の水道水を水筒に入れて利用しようと呼びかけた。東京でも同じことができるのか、組織委員会の本気度が試されることになる。

施設整備に許された時間は5年余り。設計と施工に契約手続きを加味して期間を見積もれば、非常にタイトなスケジュールになる。それでも、大会を景気対策の単なる手段に終わらせてしまわないよう、準備プロセスに目を凝らしておく責任は我々ひとりひとりにある。

[日経産業新聞2014年4月10日付]

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