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NISAの恩恵と損する確率 長期データで探る

 5年間、株や投資信託の売却益や配当が非課税になる少額投資非課税制度(NISA)。本当に有利なのか、そして、成功確率の高い方法は何なのか。「5年間」という制約を前提に、長期の過去データから探る。

元本100万円を国内株式に5年間、投資していたとすると平均11万円お得だった――。NISAのような非課税口座が過去に存在したと仮定し、投資を始めて5年後の手取り額が、課税口座よりどれだけ大きかったかを試算した結果だ。

試算は金融助言会社イボットソン・アソシエイツ・ジャパンに依頼。1970年以降、1年ずつずらしながら、それぞれ5年間の収益を計測した。途中にはマイナスになった5年間もあり、それを含めて、全40期間の収益を平均した(グラフA)。

まず課税口座(税率は20%と想定)の場合、元本100万円は5年後に平均して135万円になった。一方、非課税口座なら146万円に増えていた。両者の差である11万円分が、非課税口座がもたらす恩恵だ。

他の資産はどうか。外国株式では非課税の恩恵は平均11万円とやはり大きかった。このほか国内債券は同7万円、外国債券は同4万円強お得だった。資産によって運用成績は異なるためお得度合いにも差がつく。

グラフにはないが、国内株で最も運用成績が良かった5年間(84~88年)には、非課税なら100万円が335万円に増え、課税より47万円もお得だった。利益が上がれば上がるほど、非課税効果は高まる。

実際、国内株への関心は高い。日本経済新聞社が3月にまとめた読者モニター調査では「NISAで投資したい商品」として断トツで選ばれたのが国内株。値上がり期待が強いようだ。

しかし、NISAを使うと逆に不利になることもある。損失が出ても他の口座の利益と通算する仕組みがないからだ。課税口座なら損益通算により課税利益を圧縮できる。NISAは利益が上がったときにだけ、うまみのある制度だ。

そこで、損失が出る確率がどうだったのか見てみよう。例えば国内株は、5年後に元本を割り込んだことが全40期間のうち16期間あったので、確率は40%だ。成績が最低だった5年間では100万円が48万円に減った。一方、国内債は損が出た期間がなかった。高い利益を期待できる資産ほどリスクが高い、というセオリー通りの結果だ。

分散で損失回避

では非課税メリットを狙いつつ、損失が出るリスクをある程度抑えるにはどうすればいいか。「投資の王道である分散投資」(イボットソンの島田知保氏)を薦める声もある。

もう一度、グラフAを見よう。「4資産分散」は国内株、国内債、外国株、外債に均等に投資した成績。5年後の資産額の平均は135万円で非課税メリットは7万円と、株式と債券の中間くらいだ。一方、損が生じた確率は10%で、株式や外債より損が出るリスクは低く抑えられた。

ちなみにリスクを減らすには「積立投資も有力な手法」(島田氏)。グラフにはないが、一括ではなく5年間で計100万円になるように積み立てた場合、大半の資産で一括投資より、成績が最低だった場合の傷が浅くなっていた。例えば積み立てでの国内株の最低成績は67万円だった。

原則5年というNISAの非課税期間を考えれば、最後に損失で終わるのを避けるために、途中売却で利益を確定することも選択肢になりそうだ。

野村アセットマネジメントが2月の調査でNISAの想定投資期間を聞いたところ、「5年保有」と「途中売却」がほぼ半々。過去はどちらが勝ったのか。

例えば目標として元本100万円を、3割増やして130万円にすることを考えてみる。資産ごとに(1)5年間ずっと持ち続け、5年後に130万円以上になっていたら目標は達成(2)途中で130万円に達したら、その時点で売って目標は達成――という2つの投資方針について効果を検証した(図B)。

途中売却が有力

国内株で見ると、「5年保有」で目標を達成した確率が50%だったのに対して、「途中売却」では68%あった。外債や4資産分散のケースでも途中売却の方が確率は高かったが、その差は国内株ほどではなかった。

つまり株式のようなリスクが高い資産に投資する場合は、利益が出たら売却、というルールを上手に使うと成功確率が高まりやすい。通常の長期投資と、5年という制約があるNISAの違いかもしれない。

ただし、必ず途中売却が有利とも言い切れない。試算結果では非課税運用の5年後の平均資産は、外債を除き、130万円を上回った。5年間持ち続けていたら、平均的に見れば途中売却より高い利益を得られたわけだ。目標達成の確率と、どちらを重視すべきかは一概には言えない。

NISAは今後、非課税期間の延長など制度改革の可能性もある。しかし今回のデータを参考に、自分の取れるリスクを意識した運用をしていれば一貫性のある投資を続けられそうだ。(編集委員 田村正之)

[日本経済新聞朝刊2014年4月9日付]

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