立体臓器作製にものづくり技術 再生医療、臨床広げる
再生医療に使う組織や臓器を最新のものづくりの手法で立体的に作る技術の開発が相次いでいる。佐賀大学は3次元(3D)プリンターを活用し、膝の半月板に似た組織を作ることに成功。慶応義塾大学は半導体加工技術を応用した培養装置を使い、内部に血管のある肝臓組織を育てた。今後、移植に必要な複雑な形をした組織や臓器の作製が進む可能性がある。
事故や病気で傷んだ組織や臓器の機能を取り戻す再生医療はこれまで、細胞や単一の組織を移植するだけで、治療できる病気は限られていた。臨床への応用を広げるには、たくさんの細胞で構成される立体的な組織や臓器を作る必要がある。
佐賀大の中山功一教授らは、ウシの膝の関節から軟骨細胞を採取し、3Dプリンターで半月板に形状が似た組織を作った。パソコンであらかじめ作りたいデザインを作成。3Dプリンターがデザインに沿って細胞の塊を吹き出し、剣山に似た器具の上に2時間ほどかけて機械的に積み上げていく。
さらに2週間ほど培養すると、縦1センチメートル、横4ミリメートルの半月板と同じような形状の組織になった。培養法を工夫することで、表面が滑らかでふっくらした自然な形になった。将来は人間の細胞を使った半月板を作り、移植医療への応用を目指す。
慶大の須藤亮准教授らの技術は、透明なシリコーンゴムでできた基板に半導体製造などの微細加工技術で非常に小さな溝を掘った装置を使う。血管のもとになる血管内皮細胞と肝細胞を別々に微細な溝に注入し、その間をコラーゲンで仕切った。内皮細胞はコラーゲンに潜り込んで毛細血管を網目状に作り、3週間ほどで立体的な肝臓組織ができた。
肝臓のような臓器は血管網を持つなど構造が複雑で、立体的に作るのが難しい。毛細血管を張り巡らせることができれば、将来の移植用臓器の作製に役立つ。