/

群雄割拠チャットアプリ 巨額買収、攻防の行方

米フェイスブックが総額190億ドル(約2兆円)、楽天が9億ドルを投じて買収する「チャット(対話)アプリ」。短文をやり取りする仕組みはインターネット黎明(れいめい)期からあったが、スマートフォン(スマホ)が主力となり、いつでもどこでも音声や動画がやりとりできるようになり、コミュニケーションの主役の1つとして台頭してきた。実力を探る。

対話アプリの力を測る最大の指標はユーザー数だ。各アプリの「登録者数」は、中国・騰訊(テンセント)の「微信(ウィーチャット)」が6億人、LINEが3億5千万人、楽天が買収したViber(バイバー)が3億人――。フェイスブックが買収した米ワッツアップ以外にも、3億人を超える人を集めるアプリが並ぶ。

利用頻度カギ」に

ただ、各社が競うのは「登録者数」ではなく、「利用者数」「利用頻度」だ。ワッツアップを創業したヤン・コウム最高経営責任者(CEO)は昨年5月、ツイッターで「登録者数とアクティブユーザー(利用者)数を混同するのは(スポーツカーの)フェラーリ250GTOとスケートボードを比べるようなものだ」とつぶやいた。

ワッツアップの登録数は非公表。どのくらい使われているかを示す「アクティブユーザー(利用者)数」は4億5千万人だ。他アプリのアクティブユーザー数は、微信が2億7千万人、バイバーは1億人。世界ではワッツアップが大きくリードしている。

国内ではLINEの存在感が圧倒的に大きい。スマホ利用者の動向などに詳しいMMD研究所(東京・渋谷)の調査では、国内のスマホユーザーが2013年に最も利用したアプリのジャンルは「通話・チャットできるアプリ」だった。アンケート調査を手掛けるライフメディア(東京・世田谷)が昨年8月に実施したLINEについての調査では認知率が98%。利用率は10歳代女性で88%、10歳代男性で76.5%に上った。

韓国で普及が最も進んでいるのが、カカオが2010年3月に公開した「カカオトーク」だ。韓国のスマートフォン(スマホ)利用者の97%が使っており、全世界の利用者数も1億3千万人を突破している。

ワッツアップやLINEの利用率が高いのはなぜか。文字ベースの対話チャットは、1人でもつぶやける「ツイッター」や、不特定多数の利用者向けに投稿できるフェイスブックなどSNS(交流サイト)とは異なり、対話相手が確実に存在する。

「フェイスブックは親や先生とやり取りする時に使うもの。友達はあまり居ないから、普段は使わない」――。米シリコンバレーの女子中学生の一言は、対話アプリが厳しい競争にさらされている現実と、フェイスブックがワッツアップの巨額買収に踏み切った理由の一端を示している。

友達が居ない対話アプリは、つまらないので誰も使わない。友達が始めれば、友達が友達を呼び、利用者がねずみ算的に増える。しかも友達との対話手段なので四六時中、目を離さない。使用頻度は自然に高くなる。

各社が無料アプリでサービスを競うのは、利用者を集め、利用者の個人情報や利用動向などを収集・分析して、電子商取引(EC)や広告、販売促進などにつなげたいからだ。

友達ごと「囲う」

その「集客力」と「滞留時間の長さ」を狙って、新規参入や事業の拡充が相次いでいる。「コミュニケーションはあらゆる面で重要だ。ECに使いたい」――。三木谷浩史社長率いる楽天がViberを買収したのも、中国のEC大手アリババ・グループが「来往(ライワン)」を開発し、微信を抱える騰訊に挑むのもそのパターンだ。

対話アプリ大手がSNSに「逆襲」する例も出てきた。LINEの親会社である韓国ネイバーは「BAND(バンド)」で、同じく韓国のカカオトークは「カカオストーリー」でそれぞれ写真共有やタイムライン表示などSNS的な機能を強調。いずれも利用者を集め、利用頻度を増やすのが狙いだ。すべては「利用者の時間と財布」をいかに囲い込むかにかかる。

逆に友達が移動すれば、利用者は何のためらいもなく、他の対話アプリに移動する。米グーグルのエリック・シュミット会長は「利用者は不満ならば、クリック1つで移っていく」と指摘する。

利用者を「囲い込む」ためには友達ごと居続けてもらうしかない。各社が動画像の共有、音声通話、顔を見ながら会話する「ビデオチャット」などの機能を相次いで無料提供するのは、有料では見向きもされないからだ。

米アップルとグーグルも自前の対話サービスを提供しているが、思惑通りには行っていない。滞留時間の増大にはつながらず、ワッツアップやLINEなどが利用者を伸ばした。

対話アプリは大半がアップルの「iOS」、グーグルの「アンドロイド」など主要基本ソフト(OS)に対応しているうえ、無料で使える。アップル、グーグルの収益拡大に寄与するかどうかは微妙だ。

「10億人に到達する可能性のあるサービスは多くない。190億ドルでも安いものだ」。ワッツアップ買収について、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOはこう言い切った。一寸先は闇でも、各社は利用者を集め続け、引き留め続けるしかない。

[日経産業新聞2014年3月11日付]

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン