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CO2排出抑制へ炭素税 コスト上昇が行動変える

三井物産戦略研究所シニア研究フェロー 本郷 尚

1月下旬、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は、2030年に温暖化ガスの排出量を1990年比で40%削減する「2030年パッケージ」を発表した。米国も2月初め、1992年以来続く先進国と途上国に二分化された交渉の見直しなどを国連に提案した。ケリー国務長官は「気候変動問題は大量破壊兵器並みの脅威」と表現し、世界的な取り組み強化を訴えている。

二国間クレジット活用を明記

中国でも16年からの次期5カ年計画で総量規制の可能性を示唆されるなど、20年以降の枠組みを決める15年12月の気候変動枠組条約パリ会合(COP21)に向け世界は動いている。

日本では2月25日に「エネルギー基本計画」の政府案が発表された。原発事故後の原子力の役割に注目が集まるが、エネルギー問題と双子の課題と言われる気候変動問題にとっても重要な政策である。

温暖化ガス削減目標のために二国間クレジット活用を明記したことは重要なメッセージだ。エネルギー需要量は経済や産業構造の変化で変動するし、エネルギー間の価格競争力も市場動向や技術進歩で変わる。エネルギー政策だけで二酸化炭素(CO2)をコントロールするのは短期的にも長期的にも難しい。排出枠利用は「国富の流出」と反対する意見もあるが、二国間クレジットを政策手段に加えれば気候変動制約化のエネルギー政策の負担は減る。エネルギーも気候変動も日本だけで解決できる問題ではない。インドなどエネルギー需要が増大する新興国との協力にも注目したい。

世界中で気候変動問題に取り組めば化石燃料への需要が減るから価格が下がる。国際エネルギー機関の低炭素政策のシナリオでは10~20%の価格低下を見込む。原発事故以前には20兆円を超える化石燃料を輸入していた日本にとって「国際貢献の配当」は大きい。

基本計画では様々なオプションが示されているが今後、いつ頃、どのようなエネルギーが、どれだけ利用されるのか。エネルギー構成を時間変化で検討するようだ。

しかし技術開発や市場動向は不確実であり、将来のエネルギー構成を数値で示すには強い前提が必要だ。無理に数字を作るよりは、技術や市場の変化に応じて柔軟な対応ができる仕組みを考えるほうが現実的かもしれない。

例えば省エネ、原子力と再生可能エネルギーゼロエミッションエネルギー、二酸化炭素地下貯留も視野にいれた低炭素化石燃料の3つに分けて政策を考えてもいいだろう。

民主導でゲームチェンジ

気になるのは政府と民間の役割だ。エネルギーを消費し、CO2を排出するのは民間だ。安全保障や気候変動への対処には政府が細かく計画を作り、規制する計画経済的な手法と、政策課題をコスト化し民間の工夫に任せる市場志向的手法がある。炭素税はコスト上昇で行動を変え、削減投資支援の補助金の徴収と分配を市場に任せるのが排出量取引だ。炭素価格を本格的に導入し、民主導でゲームチェンジをするのも選択肢だろう。

エネルギーと気候変動は日本の将来を左右する重要な課題であるため拙速は禁物だ。しかし、気候変動問題の国際ルール作りは日本を待ってくれない。9月には国連気候変動サミットがあり、来年12月にはCOP21が控える。国内政策と国際貢献をつなぐオフセットなど、経済的手法がエネルギー基本計画でもカギになるのではないか。

[日経産業新聞2014年3月6日付]

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