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約束果たした浅田真央 「最高の演技」ありがとう

浅田真央が「最高の演技」をした。五輪前からの「公約」を本当に果たした。メダルに匹敵するくらい、いいものを見せてもらった、というのが正直な感想だ。演技直後のくしゃくしゃの泣き顔が、彼女の喜び、悔しさなどすべての感情を表していた。バンクーバーの涙の銀メダルとともに、語り継がれていくのだろう。

「最高の演技」宣言はもろ刃の剣だった、とすべてが終わった今になって思う。ショートプログラム(SP)の冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)で浅田は転んだ。まだ演技の大半が残っていたこの時、浅田には重大な事実が突きつけられた。もう最高はなくなった、という事実。SPでのその後の落ち込みぶりは、そう考えると理解できるような気がする。

SPの失敗にめげず、フリーでこそ「最高の演技を」と固く決意して彼女は氷上に立ったのか。答えは「イエス」でもあり「ノー」でもあるように思える。「最高の演技」への思いは簡単に捨てられるほど軽いものではなかったはずだ。しかし、彼女はフリーの後こう言っている。「昨日(SP)のようになっても、とにかく跳ぶ、という気持ちでした」

カーリングに例えるなら、フリーでの浅田には次善の策であるBプランがあった。失敗もありうることと覚悟して、氷に乗った。「最高」への思いもしっかり胸に秘めながら。それが良かったのではないか。トリプルアクセルの成功で前向きなパワーが一気に出て、自己最高点につながった。

フィギュア女子はかつてないハイレベルの戦いだった。浅田の金メダルの可能性は、SPでのトリプルアクセル失敗で消えた。SPだけは安全にダブルアクセルでいった方がよかったのでは、という声もあるだろう。しかし、それでは浅田にとっての「最高の演技」にはならない。

そこに戦略はあまりなかった。明確に見えたのは浅田のスケートへの熱い思い。それがいいのか、そうでないのかはわからない。ただ今は、勝敗を超越した次元で見る者をハラハラドキドキさせてくれる、希少なアスリートが日本にいるという幸運をかみしめたい。(田中克二)

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