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親子間贈与に税務署の目 上手なもらい方とは

子どもや孫が父母、祖父母から生活費の援助を受けることは珍しくない。教育資金や住宅購入資金をもらうケースもよくあるようだ。ただし、上手にもらわないと子や孫には贈与税がかかる。贈与税がかからないもらい方とは……。

「お金持ちの税金」。贈与税にはこんなイメージがつきまとう。確かにそうした面はあるが贈与税は誰にでもかかりうる税金だ。しかも財産をもらった人が支払う仕組みなので、もらう側が子育て世代だと家計に響く。できれば贈与税がかからない形でもらいたい。どうすればよいだろう。

贈与税は1年間(1月1日~12月31日)にその人が贈与を受けた財産の合計額にかかる。贈与税をゼロかできるだけ少額に抑えるポイントは「非課税制度や控除枠をフル活用すること」(税理士の藤曲武美氏)だ。

まず知っておきたいのが、子や孫が父母、祖父母から生活費や教育費、結婚費用、出産費用などの援助を受ける場合は原則非課税になること。父母、祖父母は子や孫を扶養する義務がある。義務を果たすために贈ったお金への課税はなじまないからだ。

「使わず運用」ダメ

ただ、「もらったお金を使わずに運用に充てる場合などは課税対象になる」(国税庁)。税務署がその事実を直ちに把握するのは困難な面があるが、注意しよう。

どんなに多額のお金をもらっても非課税、とも言い切れない。国税庁は2013年末に「扶養義務者から生活費又は教育費の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A」という文書をホームページに掲載。そこでは「通常必要と認められる金額を超える場合は課税対象」とクギを刺す。

では「通常必要」とはどれくらいの額を指すのか。国税庁は「贈与された人の需要と贈与した人の資力その他一切の事情を勘案する」として金額基準は示していない。だが、専門家の間では、子や孫が大学生ならば「300万~400万円が限度では」(元国税調査官の阿保秋声税理士)と見る向きが多い。

次に知っておきたいのは贈与されたお金の使途目的別の非課税制度だ。例えば住宅取得資金については父母、祖父母からもらう際に今年は500万円(一般住宅)の非課税枠がある。来年以降は廃止される可能性もあるので、必要なら早めに贈与をしておこう。

住宅取得資金の贈与非課税制度を利用するには、贈与を受ける人や対象となる住宅について一定の要件を満たす必要がある。現在国会で審議中の14年度の税制改正法が成立すれば、購入するのが中古住宅でも入居までに耐震工事を施せば利用できるようになる。

相続資産を減らす

教育資金については昨年4月から導入された「教育資金の一括贈与についての非課税制度」がある。15年末までの贈与について、子や孫(30歳未満に限る)一人につき1500万円まで非課税になる。必要な都度、教育費の援助を受ける場合はもともと非課税だが、こちらは一度にもらっても非課税なのがポイント。そのため、相続資産を贈与で減らして相続税を抑える目的で活用する人も少なくないようだ。

贈与税は贈与された財産から、これまでにあげた非課税分と控除枠を除いた部分にかかる。控除枠は2つのタイプがある。贈与税を毎年の贈与額に応じて納める「暦年課税」の場合は、年間110万円まで。贈った人の死後にまとめて納める「相続時精算課税」は、原則65歳以上の父母から20歳以上の子への贈与なら2500万円まで控除できる。課税額は相続財産と合わせて決めるが、相続税がかからなければ、贈与税もかからない。

これらの非課税制度と控除枠は併せて使えるため、贈与税がかからない金額は意外に多い。今年中に父母からの贈与で住宅を買う場合、住宅取得資金の贈与の非課税枠と暦年課税の控除を併用すれば合計610万円まで、相続時精算課税との併用だと3000万円までが非課税になる。

贈与税がかかる場合に見落としがちなケースも知っておこう(表A)。まず生命保険の満期保険金は、親が自ら契約して保険料を払い、子が満期保険金を受け取った場合は子に贈与税がかかる。親が不動産や株式などの名義を無償で子の名義に変更した場合も、子が財産を贈与されたと見なされ課税対象となる。

「税務署は親子間の贈与には特に目を光らせている」(阿保氏)。具体的には登記資料などで不動産の購入にあたって、親や祖父母からの贈与がないかどうかをチェックしている。贈与を受ける場合は、贈与税がどれくらいかかるかを想定しながら資金計画をたてることが大切だ。(編集委員 後藤直久)

[日本経済新聞夕刊2014年2月18日付]

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