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フェイスブック超えろ 韓国SNS、特異な進化の系譜

韓国で自国産のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を利用する人が増えている。無料電話・チャットアプリ「カカオトーク」を手掛けるカカオの「カカオストーリー」や、「LINE」を傘下に持つネイバーが開発した「BAND(バンド)」が人気を集める。「フェイスブック」などのSNS世界大手を引き離す勢いだ。カカオストーリー、バンド共に利用者数を順調に伸ばしているが、一方で海外での普及はまだこれから。韓国内だけの「ガラパゴスSNS」にとどまるか、あるいはフェイスブックに対抗する「グローバルSNS」に飛躍できるか。

フェイスブックからの乗り換え組も

カカオストーリーはカカオトークの友人同士なら簡単に友人申請ができる

ソウル市江南区に住む洪美淑(ホン・ミソク、仮名、40)さんは夫の転勤に伴う4年間の海外生活を終え、2013年初頭に帰国してからカカオストーリーやバンドを使い始めた。それまではフェイスブックを使っていたが、友人に宛てた文章や写真が知らない第三者に見られる可能性があり、常に負担に感じていたという。洪さんによると、バンドではそうした懸念が無く、カカオストーリーは「フェイスブックより、写真などを削除したり修正したりするのが便利だ」とも話す。今では韓国産のSNSを主に使うようになった。

韓国の民間調査会社ランキードットコムが米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載した携帯電話を使う6万人を対象にした調査によると、13年12月のモバイルアプリの利用率はカカオストーリーが4位。フェイスブック(7位)を上回った。ネイバーのバンドは8位だが、同年8月の156位から順位を大きく伸ばしフェイスブックに肉薄している。「ツイッター」に至っては99位と、トップ10にも入っていない。

カカオの李碩祐(イ・ソクウ)共同代表理事

カカオストーリーは、カカオトークの利用者が友人とより多くの写真などを共有したいという声を受けて開発された。12年3月に公開された。フェイスブックのようなタイムライン機能があり、「好き」「ステキ」「残念」など5つの感情表現でシンプルにコミュニケーションを図れる。カカオトークのスタンプのキャラクターも利用できる。カカオトークで友人関係になれば、カカオストーリーでも友人申請がしやすい。

現在の利用者数は国内外で5300万人を突破。「ここまで伸びたのはカカオトークの存在が大きい」とカカオの担当者は語る。カカオトークは韓国のスマホユーザーの97%、推定で約3500万人が利用。実に韓国人の7割が利用していることになる。ビジネスやプライベートを問わず、様々な場面で必須のコミュニケーションツールであり、こうした強力な基盤があればこそカカオストーリーは人気になった面がある。李碩祐(イ・ソクウ)共同代表理事は「いずれは海外でも積極的に展開していきたい」と話す。

韓国広告主協会がSNSの利用者を分析した調査によると、フェイスブックは20代の男女の利用者が多いのに対し、カカオストーリーは30~40代の女性が多い。働き盛りの女性に支持されている特徴が浮かび上がる。韓国産SNSのもう一方の雄であるネイバーのバンドは40代の男女が多い傾向にあるといい、3者それぞれが顧客層で明確な特徴を持っている。

「第三者に見られない」が安心感生む

ネイバーが発表した「BAND」は第三者が情報のやり取りを見られないのが特徴

バンドは大学の同窓会、野球チームのメンバーなど、コミュニティーごとに限定して情報をやり取りし、第三者は一切見ることができない。若年層よりも、様々なコミュニティーに参加した経験がある40代以降の利用者が中心だ。ネイバーの金相憲(キム・サンホン)社長は「フェイスブックのような公開型SNSがある一方で、バンドのような閉鎖型SNSのニーズもある」とみる。12年8月の登場と後発ながら利用者数は2300万人を突破。ネイバーによると、最近では20代など若年層の利用も増えてきているという。

ネイバーは今後、加入者数が3億人を超えたLINEと連携し、バンドを東南アジアなどで売り込む方針だ。サムスン証券は、バンドをLINEに次ぐ「第2の成長動力」と評価しており、1月中旬にネイバーの目標株価を引き上げている。

ネイバーの金相憲(キム・サンホン)社長

今後の課題はいかに海外利用者を伸ばすかだ。現在は全利用者のうち、1600万人以上を韓国人が占めている。サムスン証券の朴宰奭(パク・チェソク)氏は「台湾やタイでバンドの利用が伸びており、国ごとに好まれるコンテンツを増やしていけば、海外でのさらなる拡大が期待できる」と話す。カカオストーリーも大半が韓国内の利用とみられる。

ネイバー、カカオ共に海外での自社SNSが成功するかどうかは、それぞれが持つチャットアプリ「LINE」「カカオトーク」の普及次第。中国騰訊控股(テンセント)の「微信(ウィーチャット)」や米ワッツアップなど、より利用者数の多いライバルも存在し、激しい競争の中戦わなければならなくなりそうだ。

ネイバーが7割以上のシェアを占める韓国の検索サイトでは、「ヤフー」が12年に撤退。「グーグル」のシェアも5%以下にとどまっている。ただネイバーは検索サイト事業で進出していた日本から撤退を発表するなど、韓国のネットサービスは「ガラパゴス化」が始まったと見る向きもある。カカオストーリーとネイバーがガラパゴスSNSにとどまるのか、フェイスブックに並ぶグローバルSNSになるのか、今後数年の2社の海外戦略の本気度が問われそうだ。

(ソウル支局 加藤宏一)

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