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千客万来、クックパッドが仕掛ける食品販促革命

 月間延べ約4000万人が利用するレシピサイト、クックパッド。同サイトの利用者に向けて特売情報を発信できるサービスを利用する小売店舗が増え、食品メーカーと共同開発した新商品がヒットしている。製造から流通までレシピサイトを核とした食品の販促手法が浸透しそうだ。

献立に併せ特売情報

クックパッドの特売情報と連動した青果売り場(横浜市戸塚区のサミットストア下倉田店)

1月16日、サミット下倉田店(横浜市)の生鮮食品売り場では従業員がスマホを使い、この日特売だった牛肉の切り落としやマイタケなどの写真や価格をクックパッドの特売情報ページに投稿した。

同店の特売品コーナーには、クックパッドのロゴが入った店頭販促(POP)物や、特売の食材を使ったクックパッドのレシピを用意。来店客の中にはレシピを見ながらその日の献立を吟味する姿が目立った。

クックパッドが提供する特売情報の配信サービスは、従業員がその日の特売商品の写真と価格、コメントをクックパッドのユーザーに向けて発信できる。同じ食材を使ったレシピを併せて載せることも可能。売り場でクックパッドのロゴなどを目立たせれば、サイト利用者の購買促進効果も期待できる。

利用者は郵便番号などから近所の店を検索し、よく行く店をあらかじめ登録しておくことができる。その日の献立を考えながら、食材を安く買える店を選べるので便利だ。現在、約100万人が利用している。

サミットはこの取り組みを昨年2月から開始。開始当初の導入店舗は20店舗だったが、今では約40店舗が導入する。同社の店舗を登録しているユーザー数は約3万3500人と、約10年前に始めた同社のメール会員数に匹敵する規模に育った。

クックパッドは過去のアクセス履歴や投稿レシピから、数カ月後に需要が高まる食材や料理をピックアップし、特売情報サービスの利用店舗に情報を提供する。

クックパッドと連動してレシピを紹介するPOP(横浜市戸塚区のサミットストア下倉田店)

 広島県などに店舗をもつスーパーのフレスタ(広島市)は、こうした情報を基にチラシに掲載する商品や売り場作りを決定している。「クックパッドの情報を参考にした売り場はヒットする率が高い」(西名武史営業企画グループ長)

特売情報サービスは小売店向けに無料で提供しているが、クックパッドにとっても「売り場を通じてサイトの知名度を上げられる利点がある」(買物情報事業部の沖本裕一郎部長)。普段、インターネットを使わないシニア層に向けてサイトの認知度を上げる効果も期待できる。

クックパッドの強みのひとつは、消費者の食卓との緊密な結びつきだ。小売店は売れている商品を把握することはできるが、その食材がどう調理されて食卓に並んでいるのかまでは追跡しづらい。「クックパッドを通して特売情報を配信すれば、小売店は消費者が献立を決める来店前に商品を訴求できる」(沖本部長)

メーカーと共同開発も

クックパッドがデータとして蓄積した消費者が好む献立については、食品メーカーも着目する。日本ハムは昨年1月、野菜などを加えるだけで本格的な中華料理ができる「中華名菜」シリーズの新商品をクックパッドと共同開発した。サイトで募ったモニターを呼んだ座談会で新メニューを考案。サイト上での人気投票で上位2位に入った商品を発売した。

新商品は20~30代の女性の支持を集め、発売後1年間の売り上げは20億円(小売金額ベース)とヒット商品となった。2月には40代以下をターゲットにしたチルド総菜の新ブランドも発売する。

クックパッドは今後、他メーカーとのコンビニ向けの飲料や調理器具などの共同開発も視野に入れる。ユーザーからの声とメーカーの狙いを擦り合わせる作業には労力と時間がかかるが、共同開発した商品がヒットすれば「『クックパッドのレシピはおいしい』という認識を広められる」(広告事業部の今田敦士リーダー)。

さらに、クックパッドのサービスは食品卸の営業手法にも影響を与えつつある。サイトの検索ワードの履歴といったビッグデータを使ったデータベース事業「たべみる」は、「セロリ」「牛肉」といった単語の検索頻度を時期や年齢層、性別、地域などを指定したり、一緒に検索される頻度の高い検索ワードを調べたりできるサービスだ。月15万円から利用できる。

 食品卸大手の加藤産業は、流通業への営業の際に使う冊子でたべみるのデータを使用している。例えば「カレー」や「シチュー」といった単語と「リメイク」が一緒に検索されていることに着目。残った具材と組み合わせて食べられるうどんやパスタなどをカレーやシチューと一緒に陳列する売り場を提案した。「データを基にした売り場作りは商談を進めるうえでも効果的」(同社)という。

レシピ関連サイト・アプリ、利用8割 効率よく支度

インターネットコム(東京・品川)などの調査によると、料理をする人の中でレシピサイトやアプリを利用している人は8割弱。うち85%はクックパッドをよく使っていると回答した。「料理の作り方を覚えていない」「献立を考えるのが面倒」といった理由でサイトやアプリを利用する人が多い。ネットを駆使し、効率よく食事の支度をする人が目立つ。

生鮮食品は市場の状況で価格が変わるため、これまで紙のチラシには掲載しにくかった。クックパッドの特売情報サービスは、こうした従来型の販促ツールの弱点も補っている。この利点を生かし、パンが焼き上がるタイミングなどに合わせて投稿する店舗もある。

一方、レシピサイトという特性上、クックパッドは弁当や調理済みの総菜よりもレシピ検索を伴う生鮮食品などの販促に効果的だ。実際、小売店からは「新鮮な魚や野菜の写真を投稿するとアクセス数が伸びる」という声もあった。

もっとも、クックパッドの利用者数を考えれば、特売情報のユーザーはまだ少ない。今後は小売店と連携し、特売情報のユーザー限定の割引商品を販売するといった施策を通し、新しい利用者の獲得が求められそうだ。

(菊池友美)

[日経MJ2014年1月22日付]

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