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海を渡る「半沢直樹」 復権かけアジアで戦うTBS

今年のテレビドラマで最高の視聴率をたたき出した「半沢直樹」。TBSテレビ系で放送され日本一有名な銀行マンとなった主人公の半沢直樹が、ついに海を渡る。10月中旬から台湾を皮切りに、アジアの他の国や地域でも放送される見通しだ。TBSテレビは視聴率の低迷にもがいてきた。ただ再び人気ドラマを量産できる体制が整ったことで、今こそアジアに攻め込む好機とみる。CMスポンサーとなる日本企業とタッグを組み、広告とセットでコンテンツを現地に売り込む斬新な手法にも挑む。アジアを舞台に、「ドラマのTBS」と呼ばれた名門の復権をかけた同社の戦いが始まった。

台北の見本市、「半沢」人気で話題持ちきり

「半沢直樹」は今年のテレビドラマで最高の視聴率をたたき出した。TBSテレビはドラマ人気を受け、アジア進出を本格化させている。写真はドラマの出演者(7月、東京都千代田区)

「面談のアポがすさまじい勢いで入る。最初の放映権をなぜウチに売ってくれなかったのか、せめて再放送の権利を売ってくれという申し込みが殺到した」。TBSテレビの林慎太郎海外事業部長は、興奮冷めやらない様子でこう語る。

林部長は「半沢直樹」最終回放送直後の今月24~26日まで、台湾の台北市で開かれた放送コンテンツ関連の見本市に参加した。アジアの放送局やコンテンツ事業者が集まる会場では、「半沢」の瞬間視聴率が関西地区で一時50%超を記録したニュースで持ちきりだった。メガバンクを舞台に主人公が組織内の悪と戦うストーリーは日本人のみならず、アジア各国でも一定の共感が見込めそうだと林事業部長はみる。見本市では早くも再々放送の権利に関する商談がまとまったようだ。

かつてはヒットドラマを連発したTBSだが、ここ最近は民放視聴率4位からはい上がれず辛酸をなめていた。「半沢」効果の勢いに乗れば、これから日本のみならずアジア市場でも存在感を増すことも難しくない。

民放ドラマの歴代視聴率上位作品
順位番組名放送局放送年視聴率
1積み木くずし・親と子の200日戦争・最終回TBS1983年45.3%
2水戸黄門・最終回TBS1979年43.7%
3日曜劇場・女たちの忠臣蔵TBS1979年42.6%
4日曜劇場・半沢直樹・最終回TBS2013年42.2%
5日曜劇場・ビューティフルライフ・最終回TBS2000年41.3%
6金曜劇場・熱中時代・最終回日本テレビ1979年40.0%
6家政婦のミタ・最終回日本テレビ2011年40.0%
6太陽にほえろ!日本テレビ1979年40.0%
93年B組金八先生・最終回TBS1980年39.9%
10ひとつ屋根の下フジテレビ1993年37.8%

実際アジアの新興国では、日本の放送局が持つ番組の企画力や制作力が改めて見直されているという。各国では経済成長に伴ってチャンネル数が増えているものの、放送できるコンテンツが「質」「量」ともに十分ではないためだ。こうしたアジア各国のニーズをいち早くうまくとらえたのが韓国ドラマ。集中的に放送枠をおさえて一定の認知度をあげたことはよく知られている。

ドラマとCMスポンサーをセットで売り込む

日越国交樹立40周年を記念したドラマ「パートナー」を国営放送と共同制作。名だたる日本の大企業11社とCMスポンサー契約を結び、ドラマとセットで現地へ売り込んだ。このドラマは29日に両国で(日本では午後9時~)放送される。

そこでTBSが編み出したのが、ドラマそのものの魅力に加えて、CMを流してくれる日本企業をあらかじめ集めておき、2つの力でゴールデンタイムなど優良な放送枠をおさえるという新手法だ。日本企業にとってアジア各国で事業を拡大するにはブランド認知度の向上が欠かせない。主に製造業などの需要を取り込めるとの読みがある。

まず乗り込むのはベトナムだ。29日に日本とベトナムで放送する2時間のスペシャルドラマ「パートナー」で新手法をまず実践する。第一生命保険やトヨタ自動車、ソニー、パナソニック、大和ハウス工業など名だたる日本の大企業11社とCMスポンサー契約を結んだ。現地でも事業展開するスポンサーがCMを通じて保険や自動車、家電などを宣伝。ベトナムの消費者の購買意欲をかき立てるという作戦だ。

「パートナー」は、国営放送のベトナムテレビジョン(VTV)との共同制作。日越国交樹立40周年を記念し、ベトナムの独立運動にまつわる両国の実在の人物が織りなす友情の物語を描いている。さらに10月から来年3月までの半年に渡って、「花より男子」「仁」などTBSが誇る歴代の人気ドラマ約90本を順次VTVで毎日のように放送していく。一連の事業規模は約5億円にのぼる。

今回の「ベトナム・モデル」を、同社はアジア各国へ横展開する見通しだ。「半沢」も当然、ベトナム・モデルを支えるキラーコンテンツの一つとなる。TBSが編み出したスキームは、「クール・ジャパン戦略」を打ち出す政府戦略とも合致する。TBSとVTVは9月中旬、両国政府関係者やスポンサーらを招いて完成披露パーティーをハノイで開いたが、そこでは安倍晋三首相が応援のビデオメッセージを寄せた。

日本の地上テレビ放送の番組は、輸出金額が63億円(2010年、総務省調べ)と韓国の半分以下にとどまる。日本のコンテンツ市場は米国に次ぐ世界第2位の規模を誇るにも関わらずである。「日本は韓国の約10倍の市場規模がありながら、テレビ番組の輸出額は3分の1程度」。総務省の「放送コンテンツ流通の促進方策に関する検討会」は今年6月、コンテンツ市場の中核を占めるテレビ放送の課題をこう指摘した。検討会は著作権処理の円滑化など輸出促進の必要性を強調するとともに、「5年後(18年)までに放送コンテンツの海外事業売上高を現在の約3倍に増加させる」との目標を掲げた。

22日に放送した「半沢直樹」の最終回では、ラストシーンでまさかのどんでん返しで主人公が子会社への出向を命じられた。ミニブログ交流サイト(SNS)上では、続編や映画化につなげる布石との観測で持ちきりだ。あるTBS幹部は「頭取にのぼり詰めるまで続編をやる」と明かす。同社は本ドラマをドル箱に育てる気まんまんだ。

ドラマで主人公は、見せ場に必ずこう見えを切った。「倍返しだ」――。話題となったこの決めゼリフは、そもそも金融業界でライバル銀行からある会社への融資を取り返し、2倍の貸出契約を新たに結ぶ営業用語だという。日本国内の視聴率争いでは苦戦続きだったTBS。アジアという新天地で波に乗り、晴れて「倍返し」となるかどうか。

(産業部 杉本晶子)

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