群馬県、「がん特区」に指定 重粒子線軸に医療産業集積
政府は13日、群馬県が申請していた「がん治療技術地域活性化総合特区」を指定した。先進医療の重粒子線治療技術に強い群馬大学を中心に産官学が連携し、医療産業の集積を目指す構想だ。すでに県内企業などが3プロジェクトに先行的に着手している。特区認定で財政的な支援や規制の緩和などが期待でき、これをテコに自動車産業に次ぐ産業を育てる。
がん特区の申請にあたり、県は国に対し医療技術の向上に関する14プロジェクトを提案。参加企業は地元企業のほか、三菱電機や東芝も名を連ねる。14プロジェクトのうち3プロジェクトが既存の補助制度を活用して、先行的に始まっている。
金属部品の蔵前産業(前橋市)は群馬大と組み、重粒子線治療器の主要部品であるフィルターの開発に乗り出している。現在、重粒子線治療は前立腺や肺などに限られているが、精度を高め、適用範囲の拡大を目指す。
高崎市内に生産拠点を持つ協和発酵キリンは抗体医薬品と重粒子線を組み合わせた治療法を提案。生産設備や原材料の見直しで低コストな抗体医薬品の開発を進めている。特区の指定で国に規制緩和を期待しており、「承認審査の簡略化などを求めたい」としている。
特区構想で県は異業種からの医療分野への参入も推奨。藤岡市に工場がある標識ポール製造のヨシモトポールはがん治療用の生薬の原料を水耕栽培で生産するシステムを開発している。
指定を受け、大沢正明知事は「医療産業の振興に大きく弾みがつく」とコメントを出した。フル生産が続く富士重工業を筆頭に県内自動車産業は好調だが、経済における自動車産業への依存度は年々上昇。新産業の育成は急務だった。
総合特区には2種類あり、群馬県は優遇措置の手厚い「国際戦略総合特区」を昨年申請し、指定を見送られた。今回も国際戦略特区を併願したが、採択されなかった。
地域活性化総合特区は財政支援の規模が小さく「どこまで支援してもらえるのか読みにくい」(県内製造業)という声もある。規制緩和も案件ごとに国と交渉する必要があり、要望がどこまで実現するか懸念材料も残る。