低い自由化率、中韓双方が妥協 FTAで90%関税撤廃へ
【ソウル=加藤宏一】中韓の自由貿易協定(FTA)交渉は自由化対象が貿易品目の90%、輸入額の85%という低い水準にとどまった。韓国は農水産物、中国は一部の工業品を互いに保護したい品目として抱えており、双方が折り合った格好だ。
「この水準なら、農水産物を保護できる」。韓国産業通商資源省の担当者は6日の記者会見でこう強調した。韓国は国内総生産(GDP)ベースで世界の約6割の国・地域とFTA経済圏を築いているが、すでに発効している米国、欧州連合(EU)とのFTAでは品目の99%以上が自由化対象。中国でも同水準の自由化が決まれば、国内の農業分野が壊滅的な被害を受けるとの懸念が広がっていた。
中韓の貿易品目は約1万2千で、単純計算で1200品目が自由化の対象から外れる見通し。2012年の韓国の中国からの輸入総額は約808億ドル(約8兆円)で、そのうち農水産物は42億ドル。このため「コメは自由化から除外。ほかの農水産物も大半を保護できるだろう」(同省関係者)とみている。
さらに韓国では最近、米韓FTAを活用して、トヨタ自動車などが米国製の自動車を韓国に輸出するなど、輸入車の販売が伸びており、中韓FTAの発効後に自動車分野でも中国からの輸入が拡大するとの警戒もある。自動車部品などの一部も保護したい品目に含まれる可能性がある。
中国にとっても、韓国製の液晶パネルなどの電子部品は脅威で、鉄や素材などの工業製品についても輸入拡大を懸念する見方がある。一方で、米韓FTAでは対象から除外された開城(ケソン)工業団地の製品について、中国側は前向きな姿勢を示すなど、政治的な思惑も見え隠れしている。
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