漁師ら「この海と、これからも生きる」 被災地3度目の夏

2013/8/15付
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東日本大震災から3度目の夏、被災地で海の魅力を伝える取り組みが盛んだ。釣り船ツアー、漁業体験、訪問客への語り……。「これからもこの海と生きる」。津波で甚大な被害を受けた漁師や旅館の女将が誓い、美しさや豊かさを発信し続けている。

晴天の広がった今月上旬、宮城県南三陸町の泊浜。山形県最上町の斉藤正人さん(46)が初心者向けツアー「手ぶらでフィッシング!」に仕事仲間と8人で参加した。

波の穏やかな湾内。釣り船から下をのぞきこむと、ロープで養殖されたカキが数メートルの深さにわたって透けて見える。「来たぞ」。仲間が釣った30センチのカレイに斉藤さんは笑顔を見せた。

ツアーを企画したのは養殖漁師の高橋直哉さん(32)。津波で漁具が流失し、家業として120年以上続く漁業の廃業も考えていた。

震災の1年後、がれき撤去のボランティアに海の幸を振る舞った。「こんなにおいしいのは初めて」「三陸は豊かですね」。満面の笑みに触れ、はっとした。

「喜ぶ顔に、小さい頃から海が大好きだった自分を思い出した」。被災した漁船を修復した。

再開したカキやホタテ養殖の生産量は震災前の半分に満たないが、漁船のかじを切る高橋さんの表情は明るい。「応援したくなるね」。斉藤さんがエールを送った。

仮設住宅から通いで漁を続ける宮城県石巻市の小川滋夫さん(63)と長男の英樹さん(32)もこの夏、初めて漁業体験を企画した。壊滅的な被害で断水が続く同市長面浦の作業小屋に約20人を招いた。参加者はカニを網から外すなどし、その場で調理したカニ汁やアナゴの白焼きを味わった。

滋夫さんは「町並みは全て津波にのまれたが、それでも海と歩む気持ちは変わらない。楽しみながら、応援してもらえるのはうれしい」と、次回開催にも意欲的だ。

「自然の豊かさは変わらない。松林の間に見える海の姿もそのままです」。宿泊客に語り掛けるのは、岩手県釜石市根浜海岸の旅館「宝来館」の女将、岩崎昭子さん(57)。建物は2階まで浸水し、自身も津波にのまれながら九死に一生を得た。

津波や、砂浜に咲くハマナスの花を盛り込んだ自作の映像を使い、毎晩のように地元の自然について語る会を開催。食事を終えた客が一人また一人と足を止めて、話に聞き入る。

岩崎さんは「長く続く海の暮らしを受け継ぐことが生き残った私の使命。この土地の魅力を発信し続けたい」と力を込めた。

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